11月8日、ミャンマーで5年ぶりの総選挙が実施された。14日に全議席が確定し、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相が率いる国民民主連盟(NLD)が改選議席の8割を超える大勝を収めたことが分かった。2015年に実施された総選挙に続くNLDの地滑り的勝利だ。

事前予想とは異なる結果だった。NLDはむしろ議席を減らし、人口の約3割を占めるといわれる少数民族がそれぞれ打ち立てた政党が躍進すると見られていたからだ。この予想を大きく裏切る形となったことで、スー・チー氏の国内における求心力の高さが改めて明らかになった。
少数民族の側からは「NLD政権になっても、期待していたほどの恩恵はなかった」(モン族の男性)と失望の声が漏れる一方で、ヤンゴンに住むあるチン族の女性は「(NLD政権は)確かに期待していたほどの成果は出せなかったものの、それはスー・チー氏のせいではない。長く続いた軍事政権の失策をスー・チー氏はまずは正す必要があった」と話す。この女性によれば、少数民族エリアでも少しずつではあるが道路建設などインフラ整備が進んできたという。また「軍政時代の旧態依然とした教育システムの改革にNLDが取り組んできたことにも好感が持てる」と話している。
ヤンゴン近郊には日本の主導で工業団地の整備が進み、多くの雇用が生まれた。ヤンゴンを拠点とする人材会社J-SATの西垣充・代表取締役は「この5年の間に賄賂の横行といった悪弊も減りつつある」と話す。
上述のチン族の女性の視点から眺めれば、スー・チー氏とNLDのこれまでの5年は、いわば「成果を出すための準備期間」だった。そして、これからの5年でその果実が全国あちこちで実るとの期待がNLDを大勝に導いたと言える。
だが成果を出すことは容易ではない。中国という国境を接する大国との関係を見直し、ミャンマーが抱える根深いジレンマを解く必要があるからだ。
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