東南アジアの自動車市場は日本メーカーが8割のシェアを握る「日本車王国」だ。本シリーズ「東南アジアEV攻防戦」では、電気自動車(EV)を突破口に日本勢の牙城の切り崩しを狙う中国や韓国、そして現地の企業の動きを追ってきた(第1回:「日本車王国」に異変 タイになだれ込む中国自動車メーカー、第2回:現代自はインドネシアに、ベトナムでは国産EV 下克上に虎視眈々)。各社の動きを「王国」の主である日本メーカーはどう見ているのだろうか。これにどう対応していくのだろうか。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で東南アジアの新車販売は停滞している。タイも例外ではない。タイ大手銀カシコン銀行傘下の調査会社、カシコン・リサーチ・センターによれば、今年の新車販売台数は前年比5~9%減の72万~75万台と、前年に続き低迷が続く見通しだ。

 だが例外もある。ハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHV)が好調な売れ行きを見せているのだ。同センターの予測ではHVとPHVを合計した販売台数は2021年に4万4000台となり、前年に比べ1.5倍に拡大する。「日本メーカーから競争力のあるHVやPHVが次々と登場し、市場をけん引している」と同センターのルチパン・アッサラット調査長は指摘する。

 HV市場を特に強くけん引したのが20年7月、世界に先駆けてタイに投入されたトヨタ自動車の「カローラ クロス」だ。

トヨタが世界に先駆けてタイに投入した「カローラ クロス」
トヨタが世界に先駆けてタイに投入した「カローラ クロス」

 投入から半年足らずで、カローラ クロスはトヨタが20年にタイで販売したHVの半数を越えるほどの存在となった。同年のトヨタのタイにおける新車販売台数は前年比で9万台ほど落ち込んだが、カローラクロスの好調もあってHVの販売台数は増加した。21年1~6月も好調が続いている。「いいクルマが出ればHVも十分売れていくことが分かった。カローラクロスの投入でHVの販売比率は全体の1割程度に高まっている。無視できない数字だ」(トヨタ関係者)

HVとPHVは日本勢、EVは中国勢

 トヨタ以外の主要な日本メーカーも、競争力の高いHVやPHVを東南アジアで量産し、次々と市場に投入している。

 たとえばホンダは20年にタイで主力の「シティ」のHVを展開し、今年には同車HVのハッチバックモデルも販売。さらに、モデルチェンジした中型セダン「アコード」のHVも投入した。足元でシティの月間販売台数の1割が、アコードでは半数以上がHVモデルになっているという。「想定以上の好評を得ている。期待通りの燃費と走りを実現したことに加え、環境意識の高まりも影響しているだろう」とアジアホンダモーターの五十嵐雅行社長兼CEO(最高経営責任者)は話す。

ホンダの「シティ ハッチバック e:HEV」
ホンダの「シティ ハッチバック e:HEV」
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