8月10日朝、ライドシェア・配車サービスを展開するグラブのタイ法人本社前に、同社と契約する二輪ドライバーが次々と集まってきた。その数は100人を超える。経営陣に対して不満の声を伝えるためだ。「グラブは我々に対する不当な扱いをやめろ」。「ボーイ」というニックネームで呼ばれるリーダーはこう叫び、「経営幹部に直接要望を伝えたい」と迫った。

ドライバーの不満は多岐にわたる。たとえばグラブはレストランの食事を配達するサービス(フードデリバリー)の実績に応じてドライバーに慰労手当を支給しているが、最近になって制度変更され、以前よりも多くの実績を積まなければ手当を受け取れなくなった。また事故に遭った際に支払われる保険金が十分ではなく、さらにドライバーによって受け取れる額に違いあることも「フェアではない」との批判が強く出た。
グラブが展開するライドシェア・配車サービスはタイ国内で「グレーゾーン」の事業に当たる。法整備が追い付いていないためだ。このリスクをドライバーばかりが背負っていることに対する不満も根強くある。ドライバーは警察から処分を受けたり、既存の二輪タクシー業者から暴力に遭う危険を抱えている。その際のグラブの対応が十分ではないという指摘がある。加えて、デリバリーサービスの業務中に発生した駐車料金をドライバーが自ら負担しているという問題もあった。
大小様々な不満を抱えたドライバーは、待遇改善を求めてタイ法人の本社までやってきた。だが入居するビルの前に柵が巡らされるなど、グラブ側に彼らを歓迎する雰囲気はない。ドライバーたちのシュプレヒコールに対応するために入り口に現れたのも、幹部クラスではなくマネジャークラスの人物だった。
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