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 東南アジア各国が新型コロナウイルス禍による消費の低迷に直面している。観光産業が大きな打撃を受けたタイは特に厳しい。アジア開発銀行の見通しによれば、2020年の経済成長は前年比マイナス6.5%に落ち込み、タイ工業連盟(FTI)によれば20年の国内の自動車販売台数は前年比で半減する可能性があるという。

 消費者の財布のひもがかつてないほど固くなった今、自社の製品やサービスを売っていくにはどうすればいいのか。苦境を乗り越えようと、知恵を絞って新しい販売手法に取り組み始めたタイ企業もある。

「1物件購入したら、もう1物件プレゼント」

 「新型コロナでバンコクの不動産市場が大きな打撃を受けた。足元では徐々に回復してはいるものの、我々のマンションの売れ行きは通常に比べて大きく落ち込んだ」。バンコク市内に複数の高層マンションを展開する不動産開発大手、サイミス・アセットのCEO(最高経営責任者)で創業者のカジョンシット・シグサンサーン氏はこう話す。

売り出し中のマンションのモデルルームで取材に応じるサイミス・アセットのカジョンシットCEO(最高経営責任者)

 手をこまぬいていても買い手は現れない。そこで同社が編み出したのが「おまけ」キャンペーンだ。8月にも販売を開始する予定の新しい高層マンションで、20人の物件購入者に限りもう1物件を「おまけ」する取り組みを始めた。価格は2物件セットで500万バーツ(約1700万円)だ。1物件だけ欲しいと考える消費者には少し高めの価格になるが、セットで考えれば格安となる。つまり実態としては大幅値引きした「セット販売」という見方もできるが、これをあえて「1物件おまけ」という形で宣伝したところにサイミス・アセットのしたたかさがある。