タイの首都バンコクに外国人旅行者やタイの若者が多く集まる「カオサンロード」と呼ばれる通りがある。「バックパッカーの聖地」との異名を持つ名所だ。そこに最近、緑色に塗られた移動販売車が毎晩やってくるようになった。車の周りには人だかりができている。彼らが買い求めているのは大麻だ。

 「リラックスしたいならこの種類の大麻、気分を高揚させたいならこれ。お茶にして飲んでもいいし、吸ってもいい」。近隣の飲食店が響かせる大音量のクラブミュージックに負けないよう声を張り上げながら、販売員は数種類の大麻を売り込んでいる。

バンコクのカオサンロードに毎晩やってくる大麻の移動販売車
バンコクのカオサンロードに毎晩やってくる大麻の移動販売車

 価格は大麻1グラムで1000バーツ(約3800円)。決して安くはないが、「売り上げは好調で、1日で10万バーツに達することもある」と販売員は言う。

 こうした大麻の販売が許されるようになったのは6月に入ってからだ。タイ政府は同月9日、規制する麻薬のリストから大麻を除外した。スマートフォンのアプリを通じて届け出をすれば、20歳以上であれば誰でも大麻を栽培できるようになった。

 葉や茎などに加え、幻覚などの向精神作用を示すテトラヒドロカンナビノール(THC)の含有率が0.2%以下の大麻抽出物を健康や医療目的で販売、使用することもできる。ただし公共の場で喫煙したり、許可を得ずに食品や化粧品などを生産販売したり、0.2%を超えるTHCを含む抽出物を所持し流通させたりすることは禁止だ。

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