アジア太平洋地域で中国に対する警戒感が急速に高まっている。各国が新型コロナウイルスへの対応に追われる中で、中国が「火事場泥棒」をするかのように覇権主義的な動きに出ていること、あるいは覇権主義的な動きを積極化させるのではないかとの恐れが中国に対する拒否反応を誘発している。
特に対中感情が急激に悪化したのがインドだ。現地メディアによれば6月20日、ニューデリー近郊にある中国スマートフォンの大手メーカーOPPO(オッポ)の工場で中国製品の不買を呼びかける抗議運動が起き、習近平国家主席の写真が燃やされた。

同様の抗議デモはインド各地で起きているようだ。ツイッターなどSNS(交流サイト)上では中国製品の不買を呼びかけるメッセージが飛び交い、中国製のスマホ向けアプリを排除する動きも広がる。「Remove China Apps(リムーブ・チャイナ・アプリ)」と呼ばれる中国製アプリを発見し排除するアプリが瞬く間に人気を集め、ダウンロード数は500万回を越えた。米グーグルは3日までに、このアプリをストアから削除している。だが類似のアプリは多数出回っており、地元メディアも積極的にこうした「中国排除アプリ」を紹介している。
インド経済紙ビジネス・スタンダードによれば、インド通信当局は国営通信会社2社に対して4G通信機器の調達から中国企業を排除するよう求め、民間各社に対しても同様の対応を求めている。さらにインド中部のマハーラーシュトラ州政府は、中国自動車大手の長城汽車の工場建設など中国企業と進めていた複数のプロジェクトを停止した。さらにインド政府は中国企業から申請を受けていた6件の投資計画について、安全保障上の懸念があるとして調査をしているという。
インド政府は中国の製品、投資、企業を締め出そうと前のめりに動く。タイムズ・オブ・インディアの19日報道によれば、国内規制を強化したり、関税をコントロールしたりして中国製品の輸入を実質的に禁じ、中国企業がインド政府関連組織と契約を結ぶのを制限することを検討している。また中国企業のインドへの投資を厳格に審査し、さらにインドの製造業を支援して中国製品への依存度合いを減らしていく計画も進める。
対中感情が急速に悪化した契機は国境紛争だった。
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