全3328文字

 ファミリーマートのタイ事業が転機を迎えている。5月28日、タイでコンビニ事業を展開する運営会社の持ち分49%を、パートナーである同国小売り最大手のセントラル・グループに譲渡したと発表した。これにより運営会社はセントラルの完全子会社となる。日本側はタイのコンビニ経営からは手を引き、セントラル独自の店舗展開を支援する役割に回ることになった。

タイの首都バンコクの目抜き通りで営業するファミリーマートの店舗

 ファミリーマートは東南アジアではタイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピンの5カ国でコンビニ事業を展開している。中でもタイへの進出は1993年と域内では最も古く、店舗数も約1000店と最大規模となっている。

 ではなぜ、日本のファミリーマートは長い歴史と域内屈指の店舗網を抱えるタイのコンビニを直接展開することから手を引いたのだろうか。

明暗分かれたファミマとセブン

 タイのファミリーマートには強敵がいる。タイ最大財閥チャロン・ポカパン(CP)グループが展開する「セブンイレブン」だ。初出店は1989年と、ファミリーマートの進出と4年ほどしか違わないが、足元の店舗数は約1万2000店とファミリーマートを大きく引き離す。

 なぜここまで大きく差がついたのか。理由は数あるが、その1つに経営体制の違いがありそうだ。ファミリーマートが日本の本社とタイ企業の合弁事業としてスタートしたのに対し、CPグループはセブンイレブンを創業した米サウスランド・アイス・カンパニー(現米セブンイレブン)とライセンス契約を結び、当初からタイで独自のコンビニ展開を進めてきた。

 CPグループは農業関連や食品関連事業を中核事業としており、一般消費者向けの小売事業の経験は少なかった。それでもコンビニを成長事業として重要視し、「30年にわたって試行錯誤を続けながらサービスを磨いてきた」(関係者)。1990年代後半にタイを襲ったアジア通貨危機のあおりを受け、CPグループも一部事業の売却などを迫られた。それでもコンビニについては新たな中核事業と位置づけ、売却することなく育て続けた。

 CPグループが展開するセブンイレブンはグループの商品調達力や物流ネットワークを最大限活用し、タイの消費者が求める店舗に並べた。食品加工事業のノウハウを生かしてタイ人の嗜好に合わせた中食を開発。人材育成も重視し、最先端の小売りを学ぶことができる大学まで設立、その卒業生をコンビニ事業に次々と送り込んだ。

 「性急な出店により店舗の質が落ちるといった問題も抱えたが、こうした失敗も含め様々な経験を蓄積していったことで、CPグループはコンビニに精通した人材を社内で数多く抱えることに成功した」と業界に詳しい関係者は話す。