新型コロナウイルスの感染拡大と、これを封じ込めるために各国が取った封鎖措置により、人々は国境を越えて移動することが困難になった。そのあおりを受けた航空産業が危機に直面している。既に世界では民間の航空会社を中心に破綻が相次ぎつつあるが、淘汰の波はついに政府系のナショナル・フラッグ・キャリアにも押し寄せた。
5月19日、タイ政府は51%の株式を保有するタイ国際航空について、破産法に基づく会社更生手続きを裁判所に申し立てることを決めた。旅客需要の急減に耐えることができず、タイ航空の資金繰りが急速に行き詰まったためだ。

アジア太平洋地域では4月に民営のヴァージン・オーストラリア航空が破綻し、同月の現地報道によれば、ベトナム航空は保有するカンボジア・アンコール航空の49%の株式を中国系企業に売却した。そして今回、タイ航空の法的整理により、政府系航空会社も新型コロナによる再編や淘汰から免れないことが明らかとなった。
「航空産業が危機を乗り越えるのに少なくとも2~3年はかかる」。タイ大手銀、カシコン銀行傘下のカシコン・リサーチ・センターで航空産業に詳しいシワット・マネージングディレクター代理はこう指摘する。
今年中に新型コロナの感染が収束に向かったとしても、航空産業は人の移動の停滞や感染防止策の徹底といった、いわゆるニューノーマルに対応せざるを得ない。その結果、「事業展開にかかるコストは増加する」とシワット氏は見る。体力に乏しい航空会社を中心に、再編・淘汰の波が拡大していく恐れがある。
政府の救済に反発の声
もっとも、今回のタイ航空破綻の原因を、新型コロナによる旅客需要の急減という事業環境の変化だけに求めることはできない。そこに至った経緯を追うと、別の問題が見えてくる。
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