新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済を揺さぶっている。アジア開発銀行(ADB)は4月3日、新型コロナが世界全体の国内総生産(GDP)を最大で4.8%押し下げ、金額にして4兆908億ドル(約438兆円)規模の影響が出るとの予測を示した。ADBは13日には、新型コロナ対策に取り組む49の域内加盟国・地域を対象に総額200億ドル(約2兆1400億円)規模の緊急融資・無償資金提供を実施すると発表している。ビデオ会見に応じた浅川雅嗣総裁に、今後のアジア経済の見通しなどについて聞いた。

新型コロナウイルスの感染拡大に対応している域内の加盟国・地域向けに緊急支援の枠組みを発表しました。

浅川雅嗣・アジア開発銀行総裁(以下、浅川氏):まずADBは3月中旬に65億ドル(約7000億円)の緊急支援パッケージを発表しました。当初、加盟国・地域からは「医療機器が足りない。至急で手当したい」という声が出ていました。そこで防護服、人工呼吸器といった医療機器やマスクを各国・地域が十分に購入できるだけの資金が必要だと思い動きました。

[あさかわ・まさつぐ]
1958年、静岡市生まれ。81年東京大学経済学部を卒業し、同年、大蔵省(現財務省)に入省。米プリンストン大学で行政学修士(MPA)を取得。租税に精通する国際畑として知られる。アジア開発銀行総裁首席補佐官、 国際通貨基金(IMF)財政局審議役、主税局国際租税課長、経済協力開発機構(OECD)租税委員会議長、内閣総理大臣秘書官、 財務省財務官などを経て2020年1月、アジア開発銀行総裁に就任。趣味はフルートの演奏。(写真:ロイター/アフロ)

 ただその後、新型コロナの収束には時間がかかりそうだとの見方が共有され、各国・地域は貧困層への現金給付など財政措置を取らざるを得ない状況に直面しました。経済は大きく減速していますから税収は落ち、財政赤字が拡大します。こうした状況でも各国・地域が財政措置をきちんと取ることができるようにするには、ファイナンスが必要です。そこで各国・地域からの要望を積み上げる形で、融資や無償資金提供の枠を3倍に拡充しました。

 ADBはどちらかというと、ダムや橋の建設など、プロジェクトに対する支援を得意としてきました。各国・地域の財政を直接支援する枠組みがなかったわけではありませんが、利用には条件があり、どの国でも使えるものではありませんでした。財政資金を融資するには、相手国のマクロ経済の運営に何らかの瑕疵(かし)があったことを前提とし、それを改善する計画を作って履行してもらう必要があったのです。ただ今回の新型コロナ危機はあくまで外生的なものであり、経済運営に問題があったから生じたわけではありません。そこで今回は条件を大きく変えました。金利を下げ、ほとんどの国が利用できる枠組みを新たにつくったわけです。

アジアの一部の国・地域では身の丈を超えて高い金利で借金を重ねてしまう、いわゆる債務の持続可能性が問題になっています。

浅川氏:我々も目をつぶって融資するわけではありません。対外債務が積み上がっている国があるのも認識しており、ここについてはきちんと見ていきます。また今回の融資や無償資金の提供は、貧困層や弱い立場にいる人々に的を絞った支援に利用してもらうことを条件にしています。

続きを読む 2/3 金融危機や通貨危機は起きていない

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