東南アジア屈指のリゾート地として知られるタイのプーケットが、ロシアマネーでにぎわいを取り戻している。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて欧州などから締め出されたロシア人観光客が押し寄せているからだ。欧米の対ロ経済制裁と距離を置くタイの姿勢は、したたかさと同時にインバウンド依存経済の危うさも映す。
3月上旬のある日の昼すぎ、タイ南部プーケット国際空港にモスクワから9時間半かけてやってきたロシア航空最大手アエロフロートの直行便が着いた。カップルで訪れた男性は11日間の滞在予定といい、「僕は2度目の訪問で、彼女は初めて。(欧米による)経済制裁でクレジットカードが使えないので、現金を持ってきました」と話した。
プーケットは2022年秋以来、多くのロシア人観光客でにぎわう。幹線道路沿いの大型ショッピングモール「セントラル・フェスティバル・プーケット」を訪れると、首都バンコクのデパートをしのぐような混雑ぶり。カジュアル衣料品店「ユニクロ」はひときわにぎわっていた。店員に話しかけると、他店からの臨時の応援だという。
「(来店客の)9割ぐらいがロシア人観光客でしょう。Tシャツや限定品の『スヌーピー』のパジャマなどが人気ですが、それに限らず、皆さん本当にたくさんお買い上げになります。ロシアからユニクロが撤退したこともあるんでしょう」。関係者によれば、この“特需”で売上高がバンコクの店舗を上回る月もあるという。
欧米の対ロシア制裁とは距離
昼には青い空と白い砂浜で、夜には鮮やかなネオンの明かりと大音量の音楽とで観光客を引き付ける、プーケットで一番人気のパトンビーチも、ロシア人とおぼしき家族連れやカップルであふれかえっている。通りではロシア語などで使われるキリル文字の案内を度々目にした。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1069文字 / 全文1820文字
-
「おすすめ」月額プランは初月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
日経ビジネス電子版有料会員なら
人気コラム、特集…すべての記事が読み放題
ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「東南アジアの現場を歩く」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?