「これからどんな影響が出るのか。混乱は収まらないかもしれない」

 2月末、ロシアによるウクライナ侵攻のニュースを見ながら、タイに拠点を置く日系自動車部品メーカーの幹部はため息交じりにつぶやいた。

 新型コロナウイルスの感染拡大を契機に物流コストは上昇し、原材料価格も高騰している。このメーカーのタイ拠点は自社だけではコスト上昇分を吸収しきれなくなり、取引先に価格転嫁を求め始めていた。その矢先にウクライナ危機は起きた。

 「物流網の混乱は間違いなく続くだろう」。タイの大手フォワーダー、HPSトレードの飯野慎哉CEO(最高経営責任者)は指摘する。

 新型コロナの感染拡大や欧米の需要急回復を受け物流網は目詰まりを起こしており、海上運賃は一昨年から高止まりしている。これを避けようと、最近では中国から欧州への物流でシベリア鉄道を活用する動きが活発化していた。

ロシア経由の物流がリスクに

 だがウクライナ危機により、ロシア経由の鉄道を用いるリスクは飛躍的に高まった。加えて危機後は航空輸送網も混乱している。結局、貨物は海上輸送に集中し、コンテナ船の運賃は高止まりを続けることになる。

(写真:AP/アフロ)
(写真:AP/アフロ)
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 物流網の混乱は原料高にも拍車をかける。コンテナ船のダイヤは乱れており、最近では予定よりも2週間以上も遅れて工場に原料や部品が届くことが珍しくなくなっている。

 調達のタイミングが読めなくなったメーカーは、在庫を積み増すことを迫られている。タイに拠点を持つある日系の機械メーカーは、顧客から引き合いが届いた段階で部品の調達に動いている。

 「在庫は大幅に膨らむが、顧客に迷惑をかけるわけにもいかない」(同社幹部)。少しでも余分に在庫を持っておこうと各社が動いた結果、原料全体の需給が逼迫するという事態が起きているのだ。ウクライナ危機が、この悪循環を加速させる恐れは十分にある。

 工場内での新型コロナ感染拡大に物流コストの上昇、そして原料高──。ウクライナ危機が起きる以前から、東南アジアに拠点を置く日系製造業は様々な困難に直面してきた。

 例えばタイでは昨年6月ごろから感染者が急増。ワクチンの調達が遅れ医療態勢も十分とは言えないなか、工場で集団感染が発生し、操業がままならなくなる工場も相次いだ。

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