3月1日、マレーシアでムヒディン元副首相が首相に就任した。2月24日にマハティール前首相が国王に辞表を提出したことで顕在化した政変は選挙なき政権交代に帰着した。首相の座に今も固執するマハティール氏は今回の政変を、かつて腹心だったムヒディン氏による裏切りと非難している。ただ本当に裏切られたと感じているのは国民かもしれない。国民不在の権力闘争は、マレーシアの行き詰まりを象徴している。

 「これは国民に対する裏切りだ。これでは我々がマハティール氏に一票を投じた意味がなくなってしまう。2年前の選挙は一体何だったのか」。1日夜、マレーシアの首都クアラルンプールでタクシー業を営む男性はこう憤った。2018年5月に実施された総選挙でこの男性はマハティール前首相と、同氏が設立した新政党、マレーシア統一プリブミ党(PPBM)を熱烈に支持した。

 当初劣勢と思われていたマハティール氏と新政党だが、選挙では劇的な勝利を手にし、PPBMを中心に新しい与党連合がマレーシアの政治を率いることになった。だが、この枠組みは今回の政変により2年もたたず瓦解。選挙を経ないで旧勢力が返り咲きを果たし、マハティール氏は首相の座から滑り落ちた。同氏の腹心と見られていたムヒディン元副首相が与党連合から離反し、旧勢力と手を組んで3月1日、首相に就任した。

3月1日、マレーシアの首相に就任したムヒディン氏(写真:ロイター/アフロ)

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