新型コロナウイルス禍で中国からの投資マネーが止まったタイの首都バンコクの住宅市場が、思わぬ力強さを見せている。下支えするのは中間層を中心とするタイ人の実需。値ごろ感のある集合住宅が飛ぶように売れた事例もある。ただ世界的な利上げの波はタイにも及んでいる。景気の変調も懸念される中、需要の持続力が試される。

 「毎日の通勤を考えると、やっぱりBTS(高架鉄道)の駅から近いほうが便利ですから。友達にも同じような理由で買った子がいますよ」──。

 バンコクの日系企業で働く女性(30)は、2021年に都心の北方にコンドミニアムを買った。最寄りの駅までは歩いてわずか1~2分、BTSに乗ると30分で都心に着く。周辺には国立の名門カセサート大学があり、親が子どもの進学を機に購入したケースも多いとされる物件だ。

バンコクのBTS沿線にはコンドミニアムが立ち並ぶ(写真:ロイター)
バンコクのBTS沿線にはコンドミニアムが立ち並ぶ(写真:ロイター)

 以前は家族5人暮らしだったが手狭だった上、駅からも遠かった。購入したのは27平方メートルの1ルームで、価格は369万バーツ(1バーツ=約3.9円)。30年の住宅ローンを組んだ。現在は恋人と2人暮らしだという。

 10年代に大きく成長したバンコクの住宅市場だが、過熱を懸念した政府の介入もあって、19年ごろからピークアウトしつつあった。そんな下降局面とコロナ禍が重なった。不動産ブームに拍車をかけていた中国からの投資マネーの流入もストップし、市場は一層冷え込んだ。

 不動産業界にとって冬の時代が長く続くかと思いきや、タイ人の実需は想像以上に強固だった。かねて投資目的の購入も多かった都心の開発は低迷しているが、代わって、冒頭の女性の事例のように都心からやや離れた200万~400万バーツの手ごろな価格の物件の供給が進み、市場を下支えしている。

「生活の質を上げたい」

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