ロシアによるウクライナ侵攻や米中の対立激化で世界の分断が深まる中、おしなべて中立主義を採る東南アジア各国の存在感が高まっている。世界の結節点として更なる成長を遂げ、グローバル経済のけん引役になることを期待されている。一方でこの地域には課題も多い。ミャンマーの軍事クーデター、タイの少子高齢化、ラオスの抱える多額の対中債務――。バンコクを拠点に各国を巡りながら、様々な矛盾を抱えつつも前に進む東南アジアの本質を理解する手掛かりを探る。(写真:アフロ)
シリーズ
奥平力の東南アジアの現場を歩く

88回
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タイ総選挙で番狂わせ 革新野党が第1党に、新政権の行方は不透明
14日のタイ下院(任期4年、定数500)選挙で大番狂わせが起きた。選挙戦を制したのは野党第2党で革新系の前進党。選挙戦終盤に有権者の支持を急速に集めた勢いは衰えず、地滑り的に第1党に躍り出た。ただし単独で政権を取るには議…
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タイ総選挙、台風の目は超エリート率いる革新政党 反体制の象徴に
5月14日に実施されるタイの下院総選挙に異変が起きている。選挙戦は当初、現政権を率いる軍由来の勢力と、2000年代に首相を務めたものの政変で国を追われたタクシン氏に連なる勢力との争いという、従来型の構図で展開されるとみら…
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南の楽園でユニクロも大繁盛 ロシア人特需に沸くタイ経済の危うさ
東南アジア屈指のリゾート地として知られるタイのプーケットが、ロシアマネーでにぎわいを取り戻している。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて欧州などから締め出されたロシア人観光客が押し寄せているからだ。欧米の対ロ経済制裁と距離…
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「爆発的」売れ行き バンコク郊外の住宅、中国マネー減少も市場沸く
新型コロナウイルス禍で中国からの投資マネーが止まったタイの首都バンコクの住宅市場が、思わぬ力強さを見せている。下支えするのは中間層を中心とするタイ人の実需。値ごろ感のある集合住宅が飛ぶように売れた事例もある。ただ世界的な…
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物価高、資金逃避… 窮地に立つ新興国、中国との共存共栄に転機
新興国が苦境に直面している。南アジアではスリランカが膨大な借金に身動きが取れなくなり「破綻」に追い込まれた。中国による「債務のワナ」にはまったと見る向きは強い。中国の投資を歓迎してきた新興国は多いが、世界経済の変調は各国…
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「アンバンクドに決済手段を」 カンボジアのCBDC、主導者に聞く
デジタル通貨を巡り、これまでにない動きが東南アジアで起きている。カンボジアは2020年10月、世界に先駆けてブロックチェーン(分散台帳)技術を活用した中央銀行デジタル通貨(CBDC)を導入した。なぜ新興国のカンボジアが先…
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ドル支配と忍び寄るデジタル人民元 カンボジアが挑む「通貨独立」
カンボジア国立銀行(中央銀行)が、世界に先駆けて中央銀行デジタル通貨(CBDC)「バコン」を導入した。電話番号を登録するだけで電子財布が利用でき、リアルタイムの個人間送金や銀行口座への振り込み、QRコード決済といったサー…
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マニラのスラム、一家を救ったNFTゲーム コロナ禍で生計支える
デジタル通貨を巡り、これまでにない動きが東南アジアで起きている。暗号資産を稼げるゲームが流行し、中央銀行デジタル通貨の発行でも先行する。金融インフラの弱さがイノベーションを呼び、通貨のデジタル化に拍車がかかろうとしている…
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「大麻解禁」に沸くタイ、規制緩和がもたらすのは富か災いか
6月9日、タイは規制する麻薬リストから大麻を除外し、個人が使用したり、栽培したりできるようにした。これまでもタイ政府は段階的に大麻に関する規制を緩和しており、世界的に拡大が見込める大麻産業に食い込もうともくろむ。ただ思い…
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原発「復権」東南アジアでも 脱炭素と安定供給、両立の切り札に
フィリピンで30年以上にわたって放置されてきた原発が近い将来、動き出すかもしれない。原発を脱炭素に向けた「切り札」として活用しようと、アジア各国が導入に関心を示し始めた。乗り越えるべき課題は多いが、この地域が技術保有国に…
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フィリピン大統領選、「独裁者の息子」を押し上げた失望と幻想
6年に1度のフィリピン大統領選を制したのは、かつて国民が革命によって失脚させた「独裁者の息子」だった。その勝利を支えたのはソーシャルメディアだ。圧政の過去を美化する真偽の不確かな情報を、なぜ人々は受け入れたのだろうか。
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ウクライナ避難民は行けるのに……ミャンマーで広がる日本への失望
ウクライナ避難民を積極的に受け入れる日本。その様子をミャンマーの人々が複雑な思いで見つめる。クーデター以来、50万人超の国内避難民が発生した。日本への渡航を望む人も多いがほとんど受け入れられていない。ウクライナ問題との対…
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東南アジア、ロシアに武器依存というジレンマ 米中ロの狭間で綱渡り
国連総会緊急特別会合のロシアを非難する決議案の採択で、ベトナムとラオスが棄権。クーデターで国軍が権力を掌握するミャンマーも含め、これらの国は軍事面でロシアへの依存度が高い。
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「ウクライナ危機で生産の問題は複雑化」 ミネベアミツミ貝沼社長
新型コロナウイルス禍が引き起こしたサプライチェーンの混乱に追い打ちをかけるウクライナ危機。既にその影響は物流面に出始めている。日本の製造業は次々と襲い掛かる試練をどう乗り越えてきたのか、そしてどう乗り越えようとしているの…
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海外生産は「ベトナムでも採算難しく」 安い人件費依存に転換期
新型コロナウイルス禍が引き起こしたサプライチェーン(供給網)の混乱に追い打ちをかけるウクライナ危機。既にその影響は物流面に出始めている。様々な試練に直面する日本の製造業のサプライチェーンは今後どう変わるのか。縫製業大手で…
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アジアの「低コスト生産」はもう限界 日本回帰は進むのか
コロナ禍が引き起こしたサプライチェーンの混乱に追い打ちをかけるウクライナ危機。既にその影響は物流面で出始めている。人件費の安さを前提に日本の製造業が構築してきたサプライチェーンを、新たな環境に合わせてどのように変えていく…
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ウクライナ危機の余波、東南アジアに 物流・生産の混乱収まらず
コロナ禍が東南アジアにもたらした物流の混乱や原料高に収束の兆しが見えてこない。ウクライナ危機の余波が追い打ちをかけ、低コストでの生産に試練が訪れている。
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世界最大の民主主義国インドが、ロシア制裁に慎重な理由
インドがロシアのウクライナ侵攻に対し目立った批判を避けている。背景には密接な印露関係があり、ロシアとの関係を維持することで中国との対立を有利に運びたいとのもくろみもある。インドは日本や米国、オーストラリアと対中で協力関係…
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コロナ禍で経済疲弊の東南アジア、やむにやまれぬ「開国」へ
東南アジア各国が水際対策を緩和し、渡航者の受け入れに動き出している。新型コロナウイルスの感染拡大は続いているが、国を閉ざし続けるのは経済的にもう難しい。新型コロナをインフルエンザなどのように「エンデミック(一定期間で繰り…
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通貨価値300倍に 東南アジア発「リアルで稼げるゲーム」経済圏
ブロックチェーンを活用したゲームが東南アジアで人気を集めている。ゲーム内で獲得したアイテムや通貨は暗号資産として現金に換えることもできるため、経済的に余裕のない人々にとって貴重な収入源になっている。人気の高まりを受けて新…
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徹底予測2021年 底打ちか奈落か
日本経済の節目の年として幕を開けた2020年は、誰もが予想できない最悪の1年となった。すべての始まりはコロナ禍だ…
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総付加価値額が450兆円ともされる自動車産業の構造が変わり始めた。GAFAやEVスタートアップ、ソニーなどが新た…
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菅野泰夫のズームイン・ズームアウト欧州経済
ロシアを足掛かりに、欧州経済・金融市場の調査を担当して、既に十数年の月日がたちました。英国の欧州連合(EU)離脱…
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1000年企業の肖像
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グルメサイトという幻
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フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える
この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつか…
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テスラが仕掛ける電池戦争
日本でも2030年代半ばに新車販売でガソリン車をゼロにする方針が打ち出されるなど、各国の環境規制強化により普及段…
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70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄
従業員の希望に応じて70歳まで働く場を確保することを企業の努力義務として定めた、改正高齢者雇用安定法が2021年…
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