無症状感染者からの感染はありえるのだろうか。2月4日に通達された第5版診療ガイドラインには、無症状感染者も感染源となりうることが記された。翌日、国家医療専門家グループのメンバーである李興旺氏は「発病メカニズムから言えば、ウイルスを保有している以上伝染する可能性はある」と説明した。ウイルス量と病状の程度には一定の相関性があり、無症状感染者は相対的に病状が軽い、「つまりウイルス量が少ないので、症状の重い人よりも伝染力は弱い」と述べた。

 2月14日、国家衛生健康委員会の曽益新副主任は国務院の記者会見で、「感染症の一般的な伝染法則と現在のデータに基づいて、無症状感染者がPCR検査で陽性である場合に病原体を排出する可能性はある。ただし、せきやくしゃみなどの症状がないため、実際に病原体が体外に排出され伝染する確率は小さい」と説明した。

 それでも、無症状感染者から感染する可能性は排除されていない。広東通報は3月22日、以下のニュースを報道した。34歳の衣類卸売業者の林さんは、1月22日から3月8日までトルコのイスタンブールに出張していた。3月9日の夜にイスタンブールを出発し、タイのバンコクで乗り継ぎ、当日深夜に広州白雲空港から入国した。その際、空港の体温検査では正常だった。

 54歳の患者である金さんの感染が確認された後、疾病対策部門はその濃厚接触者で既に帰国していた林さんにサンプリング検査を行った。そして、林さんの感染が確認された。林さんはトルコでウイルスに感染したが症状がなかったため、体温検査や疫学調査だけで防ぎきることはできなかった。この事例は新型コロナウイルス感染症の予防やコントロールの難しさを浮き彫りにしている。

 これまで、無症状感染者に対しては14日間の集中隔離とさらなる検査を実施していた。もし隔離期間中に発症した場合には確定感染例として報告され、当局が公表する。

新たな流行の火種となるのか

 無症状感染者というグループに属する人々は、どれほどいるのだろうか。政府による日次の感染動向リポートは関連データを公表していないが、中国CDC新型コロナウイルス肺炎緊急対応疫学グループは2月17日、「中華疫学誌」で論文を発表した。その中には2月11日までに中国CDCが報告を受けた国内の病例は7万2314例で、889例の無症状感染者を含み、その比率は約1.2%だったとの記載がある。

 感染症が再び流行することを防ぐために、無症状感染者に注意を払うべきであると多くの専門家が指摘している。中国CDCの疫学主席専門家である呉尊友研究員は、PCR検査で陽性であっても必ずしもウイルスに感染していることを示すわけではないと説明する。通常、検査室では喉か鼻をこすった綿棒にウイルスの遺伝子が付いているかを検査する。一部の人の体内では、ウイルスがまだ細胞に侵入しておらず複製を開始していない可能性がある。米ハーバード大学公衆衛生学部の感染症免疫学者のマイケル・ミナ氏は、無症状感染者を確定感染例として数えなければ、ウイルス感染モデルを作成して感染範囲を理解する妨げになりかねないと考えている。

 3月20日、医学誌「ネイチャー」は「Covert coronavirus infections could be seeding new outbreaks(隠れたコロナウイルス感染症が新たな流行の火種となる可能性がある)」と題する文章を発表し、以下の警告を発した。新型コロナウイルス感染者のうち60%は無症状または症状が軽度である可能性があり、しかもウイルスの伝染力は決して低くない。このタイプの潜在的感染者が新たな流行を引き起こす恐れがある。ミネアポリス市のミネソタ大学感染症研究センターの主任を務めるマイケル・オスターホルム氏は「無症状または症状が軽度である人の割合を理解することは、我々がこの種の感染症の原因を理解するために非常に重要である」と述べた。

 隔離措置を講じていれば、無症状感染者が発症した際、早期に発見できる。「無症状の人の大部分は積極的にスクリーニングを受けることはない」と武漢疾病対策機関の内部関係者は語る。このグループの人たちに対する有効な対応手段はまだないが、「症状のあるなしにかかわらず最も良い方法は、個人が自分でしっかりと防護し他者に伝染する機会を減らすことだ。研究レベルでは無症状感染者サンプルを用いた調査と推定も計画している」とも語った。