新型コロナウイルスの国内での封じ込めに成功しつつある中国。そんな中国が今最も恐れているのが、感染が拡大する海外からの「逆流」リスクだ。濃淡はあるが北京市、上海市、広東省、浙江省など多くの地域が、海外からの渡航者に軒並み14日間の隔離を義務付ける施策を打ち出した。中には自宅を認めず指定施設でのみ隔離するところもある。浙江省では自宅ではなく指定施設での隔離を義務付ける。過敏とも思える対策の背景には何があるのか。中国メディア、財新の報道からそれが浮き彫りになってくる。

 中国武漢市で始まった新型コロナウイルスの感染はわずか2カ月の間に、国境を突破し世界に広がった。それが今、逆流を始め、怒涛の如く再び中国本土に押し寄せようとしている。

(写真:アフロ)
(写真:アフロ)

 中国の国家衛生健康委員会は、海外から中国国内に流入した確定感染者数が3月4日、計20人に上り、流入感染者数が前日比で初めて増加したと発表した。その発表があった3月5日、新たに上海で1例、甘粛省で11例、海外からの流入による確定感染例が追加された。そして翌3月6日には北京でも4例が確認された。

 WHO(世界保健機関)が毎日更新している新型コロナウイルスの感染動向によると、中央ヨーロッパ時間の3月5日10時までに、中国以外の国や地域、合計76カ国から計1万4768例が報告され、前日より2241例増えた。一方で中国では、31の省から計143例の増加にとどまった。4日から5日にかけての24時間の、海外の感染者増加数は中国国内の16倍となった。

 中国国内の新規感染者は減り、新規感染が連日ゼロという地域も増えている。しかし、感染封じ込め対策に一筋の光が差し込んだその矢先に、感染の逆流という不確定要素が加わり、再び暗雲が立ち込めた。

加速する感染の逆流

 3月4日、中国税関総局が公表した海外からの輸入症例についての情報は注目を集めた。それによると3月4日0時現在、全国各地の税関で何らかの症状が検出された入国者数は6728人で、そのうち感染の疑いがあるのは779例、ウイルスの遺伝子を検出するPCR検査によって陽性反応が認められたのは75例に上ったという。本誌(編集部注:財新)記者が税関総局に問い合わせたところ、このデータを集め始めたのは1月22日だったという。

 税関総局が公表した75例と国家衛生健康委員会が公表した20例の関連性は定かではない。この記事を執筆している間には、公式な説明が得られなかった。

 衛生健康委員会は同じく国務院の配下にある共同予防対策チームに所属している。それにもかかわらず、税務総局の関係者によると、税務総局は衛生健康委員会の発表データを把握していないという。衛生健康委員会の関係者は、20例の国内流入は3月4日までの統計で、公表数字のずれについては、税関総局に確認する必要があると説明した。

 税関が入国者を対象に実施したPCR検査で陽性反応が認められたとしても、感染確定にはならない。確定するには地元政府が対象者に再度検査を実施する必要がある。この2回の検査結果に時間差が存在するのだ。

 税関総局は、新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから、全国すべての税関で検査体制を強化し、徹底した水際対策を実施してきたという。

 すべての出入国者に対し、健康状態に関する調査票の記入を求め、調査票をチェックする。まんべんなく体温測定を行うと同時に健康状態の検査も行う。症状が表れた人や、感染の危険が高い地域から来た人、または感染者や疑似感染者に接触した人には疫学調査や医療調査、臨床検査を実施する。確定感染者、疑似感染者、何らかの症状が見られる者、濃厚接触者は例外なく、共同予防対策チームの要請に従って指定の収容場所に移動させ、隔離して健康状態を観察する。

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