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集団感染がもたらした計り知れない損失

 二酸化チタンを加工するには、硫酸法と塩素化という2つの製造工程がある。重慶鈦業の生産ラインはほとんど硫酸法を採用している。卓創資訊でチタン業界アナリストをしている王娟氏によると、科学生産装置通常、連続運転が望ましい。特に硫酸法の場合は特別な事情がない限り運転停止は許されないという。

 2018年、重慶鈦業は12億8700万元(約206億円)を売り上げ、純利益は8895万7200元(約14億円)だった。チタン業界に詳しい専門家によると操業停止になれば、人件費や固定費支出、再開に必要な経費など様々なコストが日々積み重なっていく。減産によって収入も減少する。また設備の稼働中止が長引けば、設備の保守点検も必要になる。

 さらに、重慶のある企業の責任者は記者にこう話した。感染の可能性が排除できない社員をホテルで隔離する14日間の費用は企業が負担するほかない。政府が引き受けるのは調整役のみだ。他にウイルス感染を理由に操業停止になっても、従業員に給与や生活費を支給する必要がある。さらに受注分が納入できなければ不可抗力の認定を受けてもなお違約金を支払うリスクが存在する。

 重慶鈦業の操業停止は周辺企業にも飛び火した。重慶市によると、重慶鈦業は周辺企業にエネルギーを供給していた。同じ産業パークにある重慶南松凱博バイオ製薬は、再開に備えて労働力、設備、原材料などすべての体制を整え、重慶鈦業が蒸気エネルギーを供給してくれることだけを待っている。よりによって、この製薬会社の目玉商品は新型コロナウイルスに有効とされる抗マラリア薬・リン酸クロロキンの原料だ。

 操業と停止の繰り返しは莫大なエネルギーを消耗し企業の体力を奪う。これを理由に、多くの企業は再開を検討するに当たって、さらに熟慮せざるを得ない。再開と感染防止対策の両立が必要だ。ただのスローガンではなく、感染予防に自信の持てる確実な前提がなければ再開は到底できない。これが当分の間、企業にとって唯一の現実である。

(了)

原瑞陽、羅国平、曾凌軻、孫良滋、何書静、屈慧、陳雪婉、王婧、叶展旗、実習記者 周美霖、実習記者 趙煊©財新週刊. 2020 Feb.24