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感染リスクがあっても生産は止められない
感染地域の中心に位置する武漢市。そこでも、なんとしても生産を継続しなければならない企業は少なくなかった。
医療用酸素やその他の重要物資を供給する武漢鋼鉄。この会社の生産を止めることはできないというのが、湖北省に暮らす全員に共通の思いだ。問題は、どのように従業員6000人の安全を守るかである。
武漢鋼鉄が社屋を構える青山区は、武漢市が所轄する13区の中でも感染者数と死亡率がトップレベルの地域である。本誌(編集部注:財新)の記者が入手した「中国宝武武漢本部新型コロナウイルス感染防止対策報告」という資料によると、2月13日午後3時現在、武漢鋼鉄で確定した感染者は69人に上る。
「青山区は深刻な感染地域だ。これは避けて通れないことであり、企業として踏ん張りどころだ」。武漢鋼鉄は取材にこう答えた。
中国国有企業で製鉄最大手である宝武鋼鉄集団。武漢鋼鉄は宝武鋼鉄傘下の上場企業、宝鋼の重要拠点の1つだ。年間生産高は1400万トン、主力製品は自動車用や家電用鋼板、ケイ素鋼などである。
同社は武漢市全域で使用する医療用酸素の50%超を供給する。供給先には金銀潭病院、武漢協和医院など20~30軒の指定病院を含む。新型コロナウイルス対策で急きょ建設された雷神山医院や火神山医院などウイルス感染専門医療機関向けには塗装ボード、青山区にあるコロナウイルス指定病院や発熱外来などの医療機関には電力を供給している。さらに工場周辺に住む数万人規模の地域住民に電力や水を供給している。
これだけではない。武漢鋼鉄のような超大型製鉄企業には、稼働継続が必須である特有の理由がある。コークス炉や高炉など高温高圧密閉炉は一度生産を停止すると、炉壁に穴が開いたり炉自体が爆発したりして重大な安全事故を引き起こしかねない。
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