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新型ウイルス肺炎が世界に拡大、感染が深刻な中国(写真:新華社/アフロ)

 人材確保に合わせて、必要不可欠なのが感染防止用の物資だ。湖北省は依然として深刻な状況が続いているため、医療機関に供給するマスクの生産が追い付かない状況だ。操業再開に必要な民生用マスクが市場に出回るまではまだしばらく時間がかかりそうだ。生産再開の条件を整えた一部の企業は待ちきれずに、自給自足に踏み切った。

 「1月28日からこれまでというもの、毎日まるで戦争状態だ」。福建省莆田市にある新億発グループの輸出入事業を担当する沈盛元氏はこのように表現する。新億発の主力商品は紙おむつやウエットティッシュなどだったが、地方政府からの要請で工場の生産ラインを改修しマスク生産に参入した。

 地方政府は、企業のマスク生産が地元での利用と工場再開に資すると考えている。2月1日、莆田工業情報化局はマスク生産設備を調達・導入し、感染防止用品を生産した企業に補助金を支給すると通達した。補助金として最高で設備購入費用の6割を支給する。また迅速に生産拡大を果たした場合は、慰労奨励金を支給すると決めた。

 沈盛元氏の説明によると、新億発はわずか3日間で紙おむつ生産ラインをマスク用に改修した。生産ラインにかかる人手をできるだけ減らそうとしたが、紙おむつラインが備えていた機械はマスクの不織布にしか対応しておらず、金属製の鼻金は裁断できなかった。「裁断機のカッターを2つダメにしたが、問題はどうしても解決できなかった。仕方なく不織布を使うフィルター部分のみをこのラインで生産している」

 製造ラインは72人の従業員が3交代で稼働させ、1日60万枚の生産高を維持しなければならない。「スタッフは皆地元の人間か、春節の里帰りを見送った人ばかりだ。ライン改修には20万元(約310万円)ほどかかったが、そのほとんどは1台10万元(約160万円)もする裁断機2台の購入に費やした」(沈氏)

 現在、120人の従業員が正式復帰しており、ほかに40人前後の従業員が寮やホテルで14日間の隔離観察を受けている。マスク生産ラインに張り付ける72人の作業員を減らすわけにはいかず、「復帰した従業員の数は、紙おむつ生産ライン1本が稼働できる程度」と沈盛元氏は教えてくれた。

 新億発は万一に備えて、従業員を呼び戻すに当たって感染拡大が比較的深刻な湖北省と浙江省出身の社員や、両地域の人間と接触したり発熱症状が出たりした社員を当面の召集対象から除外している。復帰した社員に対しては指定したエリアで隔離し、1日2回の検温を実施している。食事は、社員食堂で配膳した後、自室に戻って取らせるなどの対応を取った。

 新億発にはおよそ500人の従業員がおり、今後は約350人を順次隔離する予定だ。「操業再開のために、ホテルと合意した。宿泊と1日3食の提供で1人1日当たりの費用は200元(約3200円)弱だ。その上、隔離する14日分の給料を通常通り支給する」。沈盛元氏は感染対策のコストを削ることはしない、と語った。

 工場に戻った後、37度2分の熱を出す従業員がいた。同従業員は春節のあいだ莆田にとどまっていたが、14日間隔離した。もう1人の従業員は春節前に出張で武漢を訪れ、帰社した後、何日か出勤していた。「聞き取り調査で(武漢訪問が)判明したときは、冷や汗をかいた。部署の十数人全員を隔離して部屋を消毒した。幸いなことに感染はしていなかった」(沈盛元氏)

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