浙江省の各市町村は、自動車や飛行機をチャーターして農民工を工場に送り届けた。義烏市政府はこれを後押しした。企業が自動車をチャーターしたり他社と提携して社員を送迎したりした場合は、必要な費用を全額支給。自力で復帰する社員には、現金手当を支給する。復帰が早ければ早いほど支給金は手厚い。その上、初めて義烏に就業する社員を対象に3日間の宿泊費と食費を免除するという優遇策を打ち出した。

 「きめ細やかで、ぴったり寄り添った対応だ」。義烏を拠点とするアパレルメーカー社長は義烏市政府のサポートをこのように評価した。「彼らはいかに企業に協力して労働者を迎え入れるかに、誰よりも地道に取り組んでいる。毎日、電話やSNSの微信(ウィーチャット)で連絡を取り、再開の進捗や困っていることを常に事細かに把握してくれている」

地方政府が人の出入りを禁止

 しかし、チャーター機や現金手当だけでは万全ではない。義烏のメーカー2社を取材したところ、現時点で復帰できる従業員は自家用車か高速鉄道が開通した地域に限られていた。農村地域に居住する従業員は、復帰が難しい。市町村の公共交通機関がダウンした上、村や道路が閉鎖され、村民の外出自体が禁止されている。自動車や飛行機をチャーターしても人口密集地までしか行けず、農村地域には手が届かない。

 双童日用品公司の楼社長によれば、同社では自家用車を利用できる事務系と技術者を中心に、およそ3分の1の従業員が職場復帰を果たした。しかし、湖南省、河南省、安徽省や江西省など数多くの地域はまだ移動制限がある状態で、人の出入りは不自由なままだ。「入るのを禁止するのはまだしも、出る人を禁止する理由はないのに。大型バスを手配して各地方まで社員を迎えに、我々はどこまでも行く。高速鉄道に乗る必要はない。すべての費用は政府が面倒を見てくれる。しかし、それでもだめだった。地方政府との交渉は本当に至難の業だ」(楼社長)

 人材争奪戦は、義烏に限ったことではない。常住人口わずか360万3000人の福建省莆田市も喉から手が出るほど人材を渇望している。

 莆田はさまざまな市場で大きなシェアを占める。全国木材市場では7割、貴金属業界では6割、そして油絵輸出高では3割だ。製靴業及び関連の材料メーカーとして4200社がひしめき合う。靴の年間生産高は12億足で、直接または間接的に50万人に及ぶ雇用創出に貢献している。紙おむつ製造業だけで年間売上高は20億元(320億円)に上る。

 従業員復帰のため、莆田で操業する工場は給与倍増、10日ごとに支給などの好条件を提示した。その上、出迎え用の大型バスも手配した。しかし、それでも回復ペースは期待ほどではない。

 莆田市政府各部門も手を尽くしている。2月10日、莆田人力資源・社会保障局など3部門が連名で緊急物資生産企業操業再開支援金の通達を公表した。この通達によると、規定要件を満たした企業を対象に、第一線で働く従業員に1人につき日額100元(約1600円)の生活補助金を2月3日~3月3日の間支給する。またほかの地域より人材を新規採用した場合、1人当たり2000元(約3万1000円)の基準で補助金を支給するとした。

 2月17日、莆田工業と情報化局及び財政局は連名で通達を公表し、次の支援策を打ち出した。復帰した従業員の隔離をするにあたり、企業規模に応じて10万~30万元(約155万~470万円)の一時手当金を支給する。また、送迎専用車両にかかる費用も距離に応じて1人当たり最大500元(約7800円)の補助金を支給する。警察部門は、企業が従業員を専用車両で送迎する場合、交通警察があらかじめ交通ルートの計画作りや通行許可の承認に協力するとした。

 莆田市が総力を挙げて支援の手を差し伸べることを「足し算」と表現するならば、広東省中山市古鎮という町は規制を緩和する「引き算」に動き出した。古鎮の曽暁芳経済情報局長は「我々は操業再開を検討する広東省の会議に出席して、上の政策や方向について手ごたえをつかんだので、正式な通達を待たずに、微博(ウェイボ)の公式アカウントですぐさま企業と従業員宛てに公開メッセージを発信した」と語る。同局長によると、古鎮は2月17日から操業再開の許認可審査手続きを廃止して申告制に切り替えた。

 職場復帰を呼びかけた公開メッセージでは、「交通制限をしない」「人員隔離をしない」「企業活動を妨げない」というサポート体制を確約。わずか3日間で閲覧回数は30万を超えた。