「成長と分配の好循環」を経済政策の柱に据える岸田文雄首相。困窮学生への10万円給付や、18歳以下の子どもを対象にした10万円相当の給付策など、コロナ禍で生活に影響が大きいとされる層への支援を手厚くしようとしている(関連記事:異論噴出の10万円給付金、果たして消費に回るのか)。

 一方で、岸田首相は分配政策の観点から富裕層には厳しい態度を取る。10月の就任記者会見では「金融所得課税の強化」に言及した。だがその後、株式市場への配慮や衆院選に与える影響を考えてか「当面は触らない」などと発言を撤回している。

 もっとも、金融所得課税に関しては後退したものの、岸田首相が富裕層に対して厳しい姿勢で臨む点は変わらないだろう。「持たざる者」への支援強化には財源が必要だ。12月半ばに発表される令和4年度税制改正大綱では、いよいよ「あの話」が具体的に動くのではないか──。このような噂が、税理士たちの間で出始めている。

(写真:PIXTA)
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 「あの話」とは、2020年12月に発表された令和3年度税制改正大綱で盛り込まれた、相続税と贈与税の課税方法に関する見直しだ。人が亡くなった後に財産を受け継ぐ相続と、生前に譲り受ける贈与とでは、財産の次世代への移転という意味では同じだが、税負担の観点から見ると現状は大きく異なる。これを将来的に一体化して課税する方向に見直すべく、検討を進めると大綱に記載されたのだ。

 現在、相続税と贈与税が別々に計算されているのにはきちんとした理由がある。相続税は、財産を受け継ぐ人に相続財産の一部を納めさせることで、富の集中を抑える再分配としての役割を果たしている。相続する財産が多いほど税率が高くなる累進課税となっている。

 それに対して、贈与税は富裕層が財産を生前贈与して相続税を逃れるのを阻止するのが狙いだ。そのため同じ累進課税であるものの税率は相続税に比べてかなり高い。年間に譲り受けた財産の合計額から110万円を差し引いた額に課税する暦年課税が主流となっている。

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