先の衆院選で国会を安定的に運営できる絶対安定多数の261議席を確保した自由民主党。腰を据えて政権運営できる基盤を手に入れた岸田文雄首相は今後、総裁選以来掲げてきた「成長と分配の好循環」を柱とする経済政策に本格着手する。

 分配政策の目玉となるのが賃上げを行った企業を対象とする税制優遇の強化だ。11月1日の記者会見では「成長を実現し、その果実を国民一人ひとりに給与の引き上げという形で実感してもらう」と、改めて実現に向けて意欲を示した。

賃上げ企業を対象にした税制優遇策を打ち出した岸田首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
賃上げ企業を対象にした税制優遇策を打ち出した岸田首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 賃上げ税制は第2次安倍晋三政権下の2013年度に導入された。その後改正・拡大を経て、現在は通称「所得拡大促進税制」と呼ばれている。

 企業が一定以上の賃上げを実施すると、1年に限り人件費の増加分に対して15~25%が税額控除されるというものだ。例えば中小企業では、従業員の給与を1.5%以上増やすと、支給増加分の15%が税金から控除される。

 岸田政権は、同税制をさらに強化することで賃上げを促したい考えだが、その実効性に関しては複数の観点から疑問符が付く。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「本格的な制度設計に着手しようとすると、さまざまな壁にぶつかるはずだ」と予想する。

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