「ご祝儀相場」という言葉があるように、新政権発足時の株価は上がりやすい。しかし、今回首相に就任した岸田文雄氏は例外のようだ。日経平均株価は9月27日以降、3万円台から8営業日連続で下落し終値ベースで2万7528円まで下がった。10月8日は少し反発する動きを見せ、終値は2万8048円だったが、3万円台の回復までは時間がかかりそうだ。

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 米国の金利上昇や、原油価格の上昇に端を発する世界景気の後退懸念で投資家のリスク回避志向が強まったことなどが株価下落に関係している。だが5日の米国株はダウ工業株30種平均が300ドル超反発したにもかかわらず、6日の日経平均株価は続落だった。市場関係者の間では「日本株が上がらないのは海外投資家が岸田新政権の経済政策を評価していない点も関係しているのでは」という声がささやかれ始めている。

 岸田首相は、自民党総裁選時から「令和版所得倍増計画」「成長と分配の好循環」といったスローガンを掲げ、中間層も恩恵を受ける経済政策を目指すとしてきた。8日の所信表明演説でも、「分配なくして成長なし」との考えを改めて示した。

 2013年以降、安倍晋三、菅義偉両政権が進めてきた「アベノミクス」は、経済成長が企業部門を中心に進めばその恩恵が自然と家計に及ぶトリクルダウンが起こると考えていた。だが結果的に企業業績は上がったものの賃上げは十分ではなく、成長の果実は労働者に行き渡らなかった。雇用は増えたが、非正規雇用が中心で家計の所得増にはつながらなかった。岸田首相はその点を問題視し、格差是正につながる政策や、賃上げした企業に対する税制優遇といった「分配政策」で、アベノミクスの課題を改善しようとしている。

 岸田首相が再三唱える「分配なくして成長なし」の論理ではあるが、海外投資家の多くは「成長なくして分配なし」と、日本に必要不可欠なのは成長戦略であると考える。マレーシア財閥系の資産を運用するファンドの日本株ファンドマネジャーは「これから人口が減少していく日本が成長を続けるためには、生産性の高い産業へ労働人口をシフトさせることが必要不可欠。エネルギー効率を高めていくことも重要だろう。アベノミクスで実現できなかったGDP(国内総生産)増加につながる構造改革の方が先なのでは」と話す。

 海外投資家が「分配重視」を主張する岸田首相に対して不安視するもう1つの材料が、10月4日の就任記者会見でも言及された「金融所得課税の見直し」だ。実現し、課税強化となれば株式市場に冷や水を浴びせかねないと警戒感を強めている。ニューヨークのあるヘッジファンドは「日本の格差拡大は米国のように超富裕層が資産をさらに増やすといったものではなく『中間層の貧困化』によるもの。課税強化の効果は限定的なのでは」と見る。

 そもそも、金融所得課税はなぜ見直しの機運が高まっているのだろうか。

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