コロナ禍やキャッシュレス決済の進展で、現金決済需要は減少傾向にある。しかし、市中に出回る現金の額は伸び続ける一方だ。背景には、現金を銀行に預けない人が増えることによる、現金の「貯蔵需要」の高まりが関係している。

 新型コロナウイルスの感染拡大で人々が外出を控える動きに伴い、ATMにおける現金の受け入れ、払い出し件数も大きく減っている。だが一方で、世の中に出回る現金(現金流通高)は増加するという現象が起こっている。

 日本銀行の発表によれば、今年7月の現金流通高は118兆8500億円と、3月の114兆5500億円から大きく増えた。券種別に見ると、1万円札の流通高は3月に比べて4.3%増えている。1000円札や5000円札の流通高はむしろ減少しており、1万円札の増加が突出している。

(写真:PIXTA)

 なぜだろうか。考えられるのは、決済手段としての現金需要は減少しているものの、貯蔵手段としての現金需要が高まっているということだ。銀行やATMに足を運ぶ回数を減らすために、多くの人が手元に多くの現金を置いた結果、1万円札の需要が急増したことが推測できる。いわゆる「タンス預金」が増えたのだ。

 コロナ禍で顕著に表れたかに見える現金貯蔵の動きだが、現金流通高はこのところ一貫して伸び続ける傾向にある。理由は低金利だ。1990年代半ばまでは30~40兆円にとどまっていたが、日本の景気が悪化し、預金金利が下落するにつれて増え始めた。

 13年4月に量的・質的金融緩和が始まると、増加のペースは上がっていく。これは、金利が低いからと、銀行にお金を預けなくなる人が増加していることの裏返しでもある。

 他方で、キャッシュレス決済の進展・普及に伴い、家計や企業による現金の使用機会は年々減少している。19年のキャッシュレス支払額は約80兆円。消費増税に伴い導入されたキャッシュレス・ポイント還元の政策効果も相まって、消費全体に占める割合は25%を超えた。

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