全2769文字

3メガバンクとりそな銀行、埼玉りそな銀行の大手5行が8月6日に発表した、一定金額以下の個人間の振込手数料引き下げ。既存の銀行間送金システム「全銀システム」とは別の基盤を使い、他の銀行などにも参加を呼び掛ける予定だ。こうした動きを、スマホアプリを使った個人間送金や決済サービスを提供するキャッシュレス事業者らはどう見ているのか。一般社団法人Fintech協会で理事を務める神田潤一氏に聞いた。

参考記事:今更? 3メガ+りそなの個人間送金手数料引き下げに冷ややかな目

神田潤一[かんだ・じゅんいち]氏
一般社団法人Fintech協会理事/マネーフォワード執行役員。 東京大学経済学部卒。米イェール大学より修士号取得。1994年日本銀行に入行、金融機構局で金融機関のモニタリング・考査などを担当。2015年8月から17年6月まで金融庁に出向し、日本の決済制度・インフラの高度化やフィンテックに関連する調査・政策企画に従事。17年9月から現職。17年11月より一般社団法人Fintech協会理事を務める。

そもそも、なぜこのタイミングで個人の振込手数料を引き下げようとする動きになっているのでしょうか。

神田潤一・Fintech協会理事(以下・神田氏):今回の話には大きな流れがあります。政府はここ数年、決済のキャッシュレス化を推進してきました。フィンテック技術を活用したさまざまな決済事業者が立ち上がり、モバイル決済アプリが普及したのは周知の通りです。ですが、事業者が加盟店に送金する際の手数料や、銀行口座アプリのウォレットにお金をチャージする際の手数料が高い点が、キャッシュレスを推進する上での課題として浮上してきました。

 銀行が別の銀行に送金する際に支払う「銀行間手数料」がここ40年間変わっていない等、決済ネットワークの高コスト構造を見直すべきだという提言が政府や公正取引委員会から出されたこともあり、銀行界としてはこうした動きに応える必要がありました。

 そこで早速、銀行間送金で使うシステム「全国銀行データ通信システム(全銀ネット)」の在り方を検討するタスクフォースが立ち上がり、検討が始まりました。しかし、全銀ネットのシステム更改は8年に1回で、前回の更改は2019年でした。抜本的な改革には時間がかかることが予想されます。

 その間、見直しにあたりすぐにできることを考えようとなった結果、注目されたのが「J-Debit(Jデビット)」システムです。これはキャッシュカードを使って銀行口座残高を即時で引き落とすものです。海外ではクレジットカードと並びかなり使われているのですが、日本ではクレジットカードの使い勝手が良いことから、デビットカードの普及が遅れています。

 今回、あまり使われていないJデビットに光が当たったのは、銀行としてはデビット引き落としをもっと使って欲しいとする側面もあったと思います。デビットの普及・活用にもつながるし、手数料引き下げのソリューションにもつながりますから。

キャッシュレス事業者も数多く参加するFintech協会として、今回の動きをどう見ていますか。