4兆9879億円という過去最高益を出したにもかかわらず株価が低迷しているソフトバンクグループ。ハイテク株中心に売りが出ている米株安の影響といわれているが、自社株買いの発表がなかったことに対する失望売りも関係していそうだ。株主還元よりも未上場株への投資を加速させたい孫正義会長兼社長の経営戦略に、投資家は冷めたまなざしを向けている。

 金利上昇懸念や雇用情勢の不透明化を受け、この1週間不安定な動きを見せている米国株。成長株からディフェンシブ株に資金をシフトする動きもあってか、GAFAなどのハイテク株に売りが目立つ。こうした潮目の変化を大きく受けてしまったのが、5月12日に2021年3月期の連結決算(国際会計基準)を発表したソフトバンクグループ(SBG)ではないだろうか。

 SBGは21年3月期の純利益が4兆9879億円と国内企業で過去最高の水準を記録した。SBG傘下の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」を通じて投資した企業の評価益が大きく上昇した。

 中でも3月にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した、韓国のネット通販大手クーパンの評価益が2兆5978億円と大きく貢献。21年も投資先の上場企業数が「昨年を大きく上回ると見込んでいる、すでに準備中だ」(孫氏)と、投資ファンド事業が収穫期に入ったことがうかがえる。

SBGの最高益に貢献した韓国のネット通販大手「クーパン」(写真:ロイター/アフロ)

 だが、決算発表前の5月10日に1万円を超えていた同社の株価は21年3月期決算の純利益が「4兆円超え」と市場に伝わり始めた頃から下がり始め、その後8500円を下回る。数日間で約3兆円の時価総額が消えたことになる。SBGの投資先はIT(情報技術)関連やAI(人工知能)などの成長株が中心。おりしも相場の潮目が変わったことが裏目に出てしまった。

 理由は市場の動きだけではなさそうだ。「会社の利益が投資先の評価額によって大きく変わるようでは、株主としても安心できないという声は以前からよく聞いている」。こう話すのは、個人投資家の内田衛氏だ。内田氏の頭にあるのは、米ウィーカンパニーへの投資の失敗などで1兆4125億円の赤字を計上した20年3月期決算。これだけ変動が激しいと会社の実力なのか市場要因なのか判断しづらくなるというのだ。

5月12日の決算発表で、孫氏は投資ファンド事業について強気の見方を示した

 もっとも、孫氏もこの点を十分理解している。12日の決算発表では「この先も株価の上下で(業績は)上がったり下がったりする。ソフトバンクグループにとって、1~2兆円の利益や赤字はニューノーマルだ」と述べている。孫氏にとっては「許容範囲」なのだろう。

 しかし、投資家たちはこうした孫氏の見方を許してくれそうにない。

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