想定より11年早いペースで進む日本の少子化。政府はさまざまな支援を打ち出しているが、その方向性は誤っている。なぜなら「婚姻数の減少」に目を向けられていないからだ。

「第3次ベビーブーム」は起こらなかった(写真=アフロ)
「第3次ベビーブーム」は起こらなかった(写真=アフロ)

 2022年の出生数(速報値)が79万9728人と、1899年の統計開始以来初めて80万人を下回った。政府機関の推計より11年早いペースで少子化が進んでおり、この傾向が続けば、国の社会保障制度や財政の持続性が揺らぎかねない。

 国家の機能不全につながる危機的な事態ゆえ、岸田政権の焦りは大きく「異次元の少子化対策」と銘打った子ども・子育て支援制度の拡充が今年以降相次いで発表されている。

 従来の経済支援の拡充に加えて、「日本社会の意識改革」という言葉も口にし始めた。具体的には、男性の育児休業取得促進を通じて、それを実現しようとしている。男性育休取得率を引き上げることで、女性に家事・育児負担が集中する「ワンオペ家事・育児」を改め、男女共同参画を促進しようとしている。

 しかし、岸田首相は大切な問題をおろそかにしている。女性のワンオペ家事・育児が解消されても、日本の子供の数は大きくは増えない。なぜなら根本的な理由は母親の数の減少と、婚姻数の減少なのだから。

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