2008年のリーマン・ショックで破綻したワシントン・ミューチュアルに次ぐ規模の銀行破綻となった、米銀シリコンバレーバンク(SVB)。破綻までの詳しい経緯は「米シリコンバレーバンクが破綻 米財務省が緊急措置 急転直下の3日間」で詳しく報じた。

 現在、SVBは預金保険制度を運営する米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下にある。預金保険対象外の預金支払いにSVBの売却資金を充てるための、スポンサー探しも始まった。現在、米大手投資銀行のJPモルガン・チェースなどの名前が取り沙汰されている。SVB英国部門については英金融大手HSBCホールディングスが1ポンドで買収する。

 1983年の設立以来、SVはシリコンバレーのスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)から預金を集め、彼らへの融資をなりわいとすることで成長してきた。破綻騒動の発端となったのは3月8日の発表だ。

(写真=China News Service / Getty Images)
(写真=China News Service / Getty Images)

 このところの米テクノロジー産業の不振を受け、SVBでは新興企業が資金を引き出す動きが相次いでいた。SVBは資本増強策としてこの日、210億ドル(約2兆8300億円)の有価証券の売却と、エクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)による22億5000万ドルの資金調達を発表した。この際、有価証券の売却によって18億ドルの損失を計上したことも明らかにしている。

 一見、他の企業でも見られそうなニュースだ。だがSVBの場合は、預金者を安心させるための情報開示がかえってパニックを助長してしまった。

 SVBがカリフォルニアの規制当局に提出した文書によると、発表翌日の9日に、SVBの預金者が預金全体の24%に相当する420億ドル(約5兆6500億円)を引き出した。SVBの手元資金は不足し、9億5800万ドルの現金不足に陥った。SVBと規制当局は対応に乗り出したものの、十分な資金を調達できず同行は10日、破産を宣言した。

 ここで、1つの疑問が浮かび上がる。預金者は8日の発表の何に反応して資金引き出しに走ったのか。

 理由としてまず挙げられるのが、SVB固有の問題への懸念だ。SVBは総資産約2120億ドルのうち、半分以上の約1200億ドルを債券投資に充てていた。長期の国債やMBS(住宅ローン担保証券)を中心としたポートフォリオだ。債券は金利上昇局面では、価格が下落するため含み損が出る構図になる。こうした資産運用のリスクが顕在化し、資金流出が加速した。

 SVBの顧客が大口の法人中心だった点も裏目に出た。約3万7000人いたとされる顧客の1口座当たりの規模は平均400万ドル(約5億4000万円)だった。1口座ごとの預金額が大きいと、流出スピードも速い。

 コーポレートガバナンスの観点からも問題を抱えていたことが、指摘されている。同社の最高リスク責任者であるローラ・イズリエタ氏は、22年4月に約400万ドル(約5億4000万円)相当にのぼる株式を売却し、直後に辞任している。23年1月に後任が決まるまで、最高リスク責任者は1年近く空席のままだった。この間、米連邦準備理事会(FRB)は金利を急速に引き上げ、リスク資産の評価損も増えていった。