パナソニックは9月17日、米ソフトウエア会社のブルーヨンダーを約71億ドル(約7700億円)で買収した。買収話の口火を切ったのは、25年ぶりに出戻った樋口泰行専務執行役員だ。ブルーヨンダー買収の背景や狙いを聞いた。(参考:「」「」)

<span class="fontBold">樋口泰行(ひぐち・やすゆき)氏</span><br>1957年生まれ。80年、大阪大学を卒業後、松下電器産業(現パナソニック)入社。91年、米ハーバード大学経営大学院卒業。92年、松下電器退社。日本ヒューレット・パッカード社長、ダイエー社長、日本マイクロソフト会長などを経て、25年ぶりにパナソニックに戻る。2017年から、パナソニック代表取締役専務執行役員兼パナソニックコネクティッドソリューションズ社社長。(写真:加藤康)
樋口泰行(ひぐち・やすゆき)氏
1957年生まれ。80年、大阪大学を卒業後、松下電器産業(現パナソニック)入社。91年、米ハーバード大学経営大学院卒業。92年、松下電器退社。日本ヒューレット・パッカード社長、ダイエー社長、日本マイクロソフト会長などを経て、25年ぶりにパナソニックに戻る。2017年から、パナソニック代表取締役専務執行役員兼パナソニックコネクティッドソリューションズ社社長。(写真:加藤康)

ブルーヨンダーの買収は、パナソニックにとって約10年ぶりの大型M&A(合併・買収)です。

樋口泰行・パナソニック専務執行役員(以下、樋口氏):実は、私たちが買収をする間際、ブルーヨンダーには株式上場という選択肢もありました。上場後の価格は120億~130億ドルになると言われていた。ブルーヨンダーの株式を保有するファンド2社からすれば、上場させたほうが得です。それでもパナソニックが買収できたのは、ブルーヨンダーのギリッシュ・リッシ最高経営責任者(CEO)がファンドを説得してくれたからです。

よく説得してくれましたね。

樋口氏:ブルーヨンダーの成長をさらに加速させようと、2017年に招かれたのがリッシCEOです。彼はM&Aを繰り返してバラバラになっていた会社を、「アライメント(一致)」という言葉でまとめあげ、成長路線に導きました。企業価値を高めた実績があったので、彼に対するファンドの信頼はとても大きいのです。

米ソフトウエア会社のブルーヨンダー。最後は株式上場の選択肢もあったが、パナソニックの傘下入りを決めた
米ソフトウエア会社のブルーヨンダー。最後は株式上場の選択肢もあったが、パナソニックの傘下入りを決めた

買収はいつごろ考え始めたのですか。また当初、津賀一宏会長の反応はどうでしたか。

樋口氏:2018年春ごろから、パナソニックはソフトも重視しなければ生き残れないことを津賀に言い続けてきました。最初は津賀も非常に慎重で、他の経営陣から理解を得るのは相当大変でした。

 例えばソリューションビジネスでは、顧客から相談を受けた後でコンサルティングをして、システムを構築していく。ただし国ごとにビジネススタイルが異なるため、ノウハウを一朝一夕に蓄積することは難しい。この感覚は、いい製品さえ作れば、国境を越えて販売を拡大していけるというビジネスを経験してきたパナソニックの幹部には理解しづらいのです。