新型コロナウイルスの影響を受け、2020年4~6月期決算で9年ぶりに最終赤字になったパナソニック。5つある社内カンパニーの中で比較的影響が少なかったのが家電を手掛けるアプライアンス社だ。今後の家電のあり方、量販店との関係を通じた販売、開発のあり方についてパナソニックアプライアンス社の品田正弘社長に話を聞いた。

1965年、千葉県生まれ。88年早稲田大商卒、松下電器産業(現パナソニック)入社。2017年に執行役員、19年常務執行役員兼アプライアンス社社長(写真:菅野 勝男)
会社全体で20年4~6月期は98億円の最終赤字でした。アプライアンス社の営業損益は前年同期比50%減ではありましたが152億円の黒字を確保しています。
品田正弘・パナソニックアプライアンス社社長(以下、品田氏):4月は大きな影響を受けましたが、6月以降は回復に転じています。7、8月は前年同月の利益を上回り、7~9月期は増益になりそうです。コロナがまん延した後の生産はまず中国で立ち上がり、その後に日本、アジア、欧米といった順で立ち上がっていきました。
コロナによって、需要の変動が起きました。例えば、巣ごもり需要。ホームベーカリーや炊飯器、レンジ、冷蔵庫などがよく売れました。10万円の特別定額給付金の影響もあったのか、比較的グレードの高いものがよく売れている。外出ができず、エステや理美容店に行けないということで、美容スチーマー、電動バリカンもいつも以上に好調です。あとは照明やエアコン、空気清浄機。これまであまり使っていなかった部屋を在宅勤務用の書斎にして、エアコンを設置するニーズも高かった。エアコンはナノイー付の高機能モデルが人気があります。
アプライアンス社の21年3月期の売上高は前年同期比9%減の2兆3700億円、営業利益は1%減の550億円の見通しです。
品田氏:オフィスや店舗の大型空調は、需要はあるものの、納入が延期されている案件があり、販売に影響しています。例えば、どう「密」を避けるか、どう換気をするかなどオフィスのあり方を見直す顧客が多く、納入が後ろにずれています。冷蔵ショーケースは、コロナで食品スーパーが活況なため、当初予定していた改装が先延ばしされるなどし、納入が遅れていることが要因です。
企業が在宅勤務を導入したことで、個人用の家電市場の変化は大きいようですね。
品田氏:在宅勤務が多くの企業で導入され、家はオフィスにもなりました。これから、家はますますマルチファンクション(多機能)化していくのではないかと見ています。家がオフィスの代わりになったことで、家で過ごす時間は圧倒的に長くなった。そうなると、人がもっとよい家電や設備に囲まれたいと思うのは普通の心理ですよね。
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