パナソニックホールディングス(HD)のIT(情報技術)システムは大きく傷んでいた。2021年5月に同社に転じてIT改革を進めてきたのが、プロCIO(最高情報責任者)として知られる玉置肇氏だ。入社直後に驚いたことや経営会議でのやりとりなど、巨大組織のDX(デジタルトランスフォーメーション)をどのように進めているのか、玉置氏に話を聞いた。
日経ビジネスLIVEでは3月22日(水)19時から、玉置氏を講師に招いたウェビナーを開催します。参加を希望される方は「3/22開催 プロCIOが語る、巨艦パナソニックのDXの進め方」から詳細をご確認ください。

変革への本気度を感じた
2021年5月に、アクサ生命保険からパナソニック(現パナソニックHD)に転じました。相当な覚悟が必要だったのではないでしょうか。
玉置肇パナソニックホールディングス執行役員兼グループCIO(以下、玉置氏):「沈みゆく巨艦」といった雰囲気があって、自分にはCIOは務まらないのではないかと思いました。組織は大きく、歴史は長い。何をしても何かを言われそうで、ややこしそうな印象がある。だから、社内外を問わずこの仕事は誰もやりたがらないだろうと思いました。
パナソニック社内には立派で優秀な人が多くいます。豊富な人材がいるにもかかわらず、社長の楠見(雄規)は外にいる私に声をかけてきた。相当な危機感を持っていると思いました。
以前から知っていた樋口(泰行・パナソニックコネクト社長)の紹介で初めて楠見に会ったのは、緊急事態宣言が出ていた21年1月です。都内某所で距離を取りながら、3~4時間話しました。30年間停滞しているパナソニックグループを何とかしたいということでした。その後に会った津賀(一宏会長)も真剣に思いを伝えてくれた。経営陣が本気で変革に取り組もうとしている。そう思ったのが入社を決意する大きな理由になりました。
従業員数24万人に上る巨大組織の変革はかなり大変そうです。
玉置氏:妻には大反対されました。でも、命まで取られることはないだろうと思って決めました(笑)。私は今55歳。10年前だったらまだ若く、パナソニックに来ることはなかったかもしれません。しかし、この年齢で自分のキャリアのために何かをしようという気持ちはもうありません。今は私利私欲を捨てて仕事に取り組んでいるつもりです。
21年5月の入社までに何か準備をされたのでしょうか。
玉置氏:3、4月はまだ前職に就いていましたが、終業後にパナソニックグループの人などからいろいろ話を聞いて情報を集めていました。事前に人脈をつくって、入社前に楠見に、(着任後の100日間で優先的に着手すべきことをまとめた)30ページの「100日間計画」を手渡しました。だから、初日からエンジン全開です。楠見も津賀も細かいことは言いません。楠見は「もうあなたに任せたから、思う存分やってほしい」と背中を押してくれましたね。
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