総合電機メーカーとして、パナソニックホールディングスを知らぬ者はいない。だが、長らく成長のきっかけをつかみ切れず、もがいてきた。組織を変え、理念を磨き直して道をひらく。=文中敬称略

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

■この連載ここまで
(1)パナソニック、思考停止の壁どう壊す トップ楠見の頭の中
(2)イーロン・マスクの速さに学べ パナソニック、電池100年目の脱皮
(3)さらば家電の安売り パナソニック、マイナーチェンジ地獄脱す
(4)パナソニック、巨額買収の米ブルーヨンダーと始まった融合
(5)道しるべか呪縛か パナソニック、神様・松下幸之助と終わらぬ対話

楠見雄規[くすみ・ゆうき] 氏
楠見雄規[くすみ・ゆうき] 氏
1965年奈良県生まれ。89年京都大学大学院工学研究科修了、松下電器産業(現パナソニックホールディングス)入社。主に研究開発畑を歩む。家電を扱うアプライアンス社の副社長などを務め、2019年にオートモーティブ社社長に就任。トヨタ自動車との角形電池の共同出資会社設立に向けて交渉役を務めた。常務執行役員を経て21年にパナソニック社長兼CEO、持ち株会社化した22年4月から現職。趣味は料理とロードバイク(写真=的野 弘路)

パナソニックホールディングス(HD)の社長に就任する直前、車載関連事業のトップのときにトヨタ自動車の従業員の仕事ぶりを見て、驚かれたそうですね。

パナソニックHD・楠見雄規社長(以下、楠見氏):勉強させてもらう機会がこれまでにたくさんありました。生産現場で一人ひとりが改善に次ぐ改善を重ね、仕事をどんどん進化させる姿を目の当たりにしてきました。無駄に対する意識などが、我々と全く違っているのです。

 1970年代、トヨタと松下電器産業(現パナソニックHD)は日本の製造業の代表と言われていました。そんな時代もあったのですが、トヨタの現場を見てきて、これが進化を続けてきた会社と停滞が続いてきた会社の違いなのかと感じたのです。もちろん、戦略の巧拙など他の要素もあるとは思いますが、やはり基本的な姿勢の違いが大きな差を生んだのだろうと考えています。

知恵が集まらなくなっていた

パナソニックHDの過去最高の営業利益額は84年度の5757億円で、今も更新できていません。長らく成長できていない理由はどこにあるのでしょうか。

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