パナソニックホールディングス(HD)が傘下に収めた米ブルーヨンダー。世界的な景気減速の波をかぶる中でも、融合への模索が見える。事業会社トップの樋口泰行にとり、3年かけた買収後の本当の仕事が始まる。=文中敬称略
■この連載ここまで
(1)パナソニック、思考停止の壁どう壊す トップ楠見の頭の中
(2)イーロン・マスクの速さに学べ パナソニック、電池100年目の脱皮
(3)さらば家電の安売り パナソニック、マイナーチェンジ地獄脱す

パナソニックHDがサプライチェーン管理のソフトウエア会社、ブルーヨンダーを総額約8600億円で買収したのは2021年9月。期待の大型買収だったが、1年たたないうちに景気減速の洗礼を浴びた。
ブルーヨンダーは生産現場から店頭までの物の流れを効率化するソフトを開発しており、AI(人工知能)を使っている。高い精度で需要を予測しようとするもので、企業は適正な生産・在庫の計画づくりに利用する。米コカ・コーラや英ユニリーバなど3000社以上の顧客があり、21年度の従業員数は約5500人、売上高は11億ドルだった。
だが、世界的に景気の減速感が強まり、企業がIT(情報技術)投資を抑えた。パナソニックHDは22年10月、ブルーヨンダーを抱える事業会社、パナソニックコネクト(東京・中央)の23年3月期営業利益を従来予想の370億円から150億円に下方修正した。
「私がすべての責任を取る」
ブルーヨンダーの買収を推し進めたのは、コネクト社長兼CEO(最高経営責任者)の樋口泰行だ。17年、日本マイクロソフト会長から約25年ぶりに、新卒で入社したパナソニックグループへと戻り、コネクトの前身組織のトップに就いていた。

コネクトはノートパソコン「レッツノート」から航空機内の娯楽システムなどハードウエアを展開してきた。樋口は「いずれハードはコモディティーになる」と考え、追うべき事業領域をハードとソフトで価値を生み出すサプライチェーン分野と見定めた。足りないピースとして、ブルーヨンダーの買収へと踏み込んだ。
だが、買収にかかる費用があまりに高額だとして、社内で反対に遭った。検討から完了までに要した時間は約3年。最後は「すべて私が責任を取ります」と当時のパナソニック社長だった津賀一宏に訴え、津賀が役員を説得してようやく手中に収めた。樋口にしてみれば、一時的な景気減速程度のことにひるんでいる暇などない。
反転攻勢は始まっている。「サプライチェーンの計画から物流まで一貫したソリューションを提供できるのはブルーヨンダーだけだ」。22年7月、ブルーヨンダーはCEOとしてダンカン・アンゴーブを迎えた。
米オラクルなどでSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)ビジネスの経験を培い、クラウド戦略にたけている。「コネクトが持つセンサー、カメラなどで得られるデータを使い、顧客企業への支援の質を高めたい」。アンゴーブはこう語っている。
実際に今、パナソニックの技術を使って事業の相乗効果を目指す動きが始まっている。
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