(写真:AFP/アフロ)
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 「経済と政治は無関係」。これは企業が国外で活動する際の基本的な原則だ。だが今、その原則が揺らいでいる地域がある。舞台は、中国の一部でありながら「一国二制度」の原則の下、別の法体系で統治される「香港」だ。今年5月22〜28日に北京市で開催された全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で導入方針が決定された「香港国家安全法」に、賛意を表明する外資系企業が相次いでいるのだ。香港立法府の頭越しに中国側でルールを策定しようとしている点が波紋を呼んでいる法律で、6月18日から開催される全人代常務委員会で具体的な条文が審議されるとみられる。

 英HSBCホールディングス傘下の香港上海銀行は6月3日、「香港国家安全法」を支持する姿勢を表明した。中国のソーシャルメディア「微信(ウィーチャット)」に、香港上海銀の王冬勝・副会長兼最高経営責任者(CEO)が、香港国家安全法に賛同する活動に署名する写真を投稿した。投稿の本文では香港銀行協会が5月26日に国家安全法に賛意を示したことに触れ、「主要なメンバーとして支持を再確認する」とした。

香港国家安全法に賛成する署名をする香港上海銀の王冬勝・副会長兼最高経営責任者(香港上海銀の微信への投稿)
香港国家安全法に賛成する署名をする香港上海銀の王冬勝・副会長兼最高経営責任者(香港上海銀の微信への投稿)

 王氏は中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)と並行して開催される諮問機関、全国政治協商会議の委員も務めるなど、中国共産党と近い関係にある人物だ。HSBCはロンドンに本社を置いているものの、その収益基盤はアジアにある。

 英国政府は米国、オーストラリア、カナダと共に香港国家安全法への「深い懸念」を示している。英ジョンソン首相は香港国家安全法が撤回されない場合は香港住民に英国の市民権取得を可能にする方針を示したのはなぜか。

前香港行政トップがHSBCに圧力

 そもそも近年、HSBCに対する中国国内の風当たりは強まっていた。中国の華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟前CFO(最高財務責任者)がカナダで拘束されるきっかけとなった情報を米国に提供したことが明らかになったためだ。

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