
「我々は冷戦思考を排除している」「デカップリングには利益がないばかりか、世界経済にもダメージを与える」
中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は5月28日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の閉会後の記者会見でこう述べた。
貿易交渉の第1弾合意で訪れた、つかの間の融和ムードは霧消し、今や「新冷戦」と呼ばれるほど関係が悪化した米中関係。その中で今回の全人代では「香港版国家安全法」の制定方針が賛成2878票、反対1票の圧倒的多数で採択された。
米国は強く反発しておりポンペオ国務長官は「良識のある人なら、誰も香港が中国から高度な自治を維持しているとは断言できない」と述べた。昨年成立した、香港において一国二制度が守られているかを米国が毎年検証する「香港人権法」を念頭に置いている。さらに米下院は5月27日、上院に続いてウイグル人権法案を可決。トランプ大統領は同29日、一部の中国人留学生の受け入れを制限すると表明した。
最近の中国外交は「戦狼外交」と表現される。香港や新疆ウイグル自治区、台湾など、自国が「核心的利益」と位置づけることが少しでも脅かされそうと見るや、高圧的に振る舞う。最近はそれに「新型コロナウイルスの発生源」問題が加わった。
日本も例外ではなく、安倍晋三首相が、新型コロナウイルスが「中国から世界に広がった」と発言した際には中国報道官が「ウイルスの発生源は科学の問題だ。政治問題化したり、汚名を着せたりすることに断固として反対する」と不快感を示している。
こうした中国の強硬な外交姿勢と、李首相が発した米国との融和を求めるかのような言葉。その、ちぐはぐさには違和感を覚えずにはいられない。結節点にあるのが、経済と雇用だ。
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