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(写真:ロイター/アフロ)

 中国で年に一度の重要会議、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が5月22日、北京の人民大会堂で開幕した。大会冒頭には新型コロナウイルス感染症で亡くなった人々に1分間の黙とうがささげられ、李克強(リー・クォーチャン)首相は「武漢と湖北省を守る闘いに勝利し、決定的な成果を上げた」と強調した。毎年発表してきた経済成長率の目標設定は見送った。

 だが、今回の全人代最大の衝撃は、開幕前夜にもたらされたニュースだろう。「全人代で香港の国家安全法について議論する」というものだ。もともと香港基本法は同法制を香港政府が定めるよう求めているが、市民の反対で頓挫してきた。しびれを切らした中国が香港立法府を飛び越えて直接介入する形で、一国二制度の形骸化が進みかねず香港の民主派は激しく反発している。

 トランプ米大統領は「内容がまだはっきりしないが、導入すれば米国は極めて強硬に対応する」と警告した。ただでさえ米中貿易摩擦があったところに中国の新型コロナウイルスの初期対応を巡るあつれきがあり、米国と中国の関係はかつてないほど悪化している。中国の香港を巡る新方針は、そこに追い打ちをかけた形だ。

 全人代は基本的に中国国内の事項を取り扱うが、国外からの注目度は高い。例年、全人代の期間中は中国国内と国外をつなぐネットの接続規制が厳重になる傾向があり、中国政府が敏感になる時期とされる。新冷戦ともいえるほど米中の関係が冷え込む中で、規制当局による国内への不用意な情報流入への警戒感は高まっている。

 「千人計画」。最近、中国内ではこのキーワードの検索結果を表示することができなくなった。千人計画は中国政府が実施してきた世界から優秀な研究者を好待遇で集めるプロジェクトの名称だ。