新型コロナウイルスの感染拡大は人々の生活を一変させた。収束後もすべてが元に戻るわけではなく、人、企業、国などが営みを続けるうえでの新たな「常識」となって定着しそうなものも多い。各地で芽吹いている「ニューノーマル」を追う。今回のテーマは「中国の経済対策」。
中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が5月22日に開幕することになった。全人代は1998年以降、毎年3月5日に開いてきたが、今年は新型コロナウイルスの流行を受けて延期されていた。そして、国内の状況が落ち着いたことを受けて開催日を決定した。

新型ウイルス流行への初期対応で、中国はミスを犯した。「人から人への感染は確認されていない」などとリスクを過小に伝えただけでなく、新型ウイルスの存在について警鐘を鳴らした医師を公安部門が締め上げた。その間にウイルスは湖北省武漢市民の間に拡散。「春節(旧正月)」という中国最大の連休を前に帰省する人の波は、武漢市から中国各地へとウイルスを運んでいった。
だが、ウイルスが制御しきれないと悟ってからの中国政府の変わり身は早かった。
1月23日に武漢市を突然、都市封鎖。2月2日には中国人民銀行(中央銀行)が公開市場操作で、1兆2000億元(約18兆7000億円)を金融市場にすると発表した。政策金利と位置付ける最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)も段階的に引き下げてきた。いずれも銀行から企業への貸出資金を潤沢にすることで、企業の倒産リスクを抑える狙いがある。ウイルスの封じ込めを徹底すると共に、このような金融政策を矢継ぎ早に繰り出した。
「4兆円経済対策」時の面影はない
ただし、財政出動を伴う経済対策については動きが鈍いのが現状だ。
主立ったところは、企業に対する社会保障費の減免や減税、地方債の発行、雇用調整助成金の支給、国有ビルに入居するテナントへの家賃減免、商品券の配布などだ。リーマン・ショックの際、4兆元(当時で約56兆円)の経済対策を打ち出して世界経済を支えた当時の面影はない。
市場関係者の間で財政出動が鈍い理由とされてきたのが、国と地方の予算を承認する役割を担う全人代が延期されていることだった。その全人代の日程がいよいよ決まったわけだが、それでもかつてのような財政出動は期待できない可能性が高い。
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