
「武漢と全国の医療従事者の努力によって入院患者がゼロになった」──。
中国国家衛生健康委員会の米鋒報道官は4月26日、世界を揺るがしている新型コロナウイルスの発生地となった湖北省武漢市で、すべての患者が退院したと発表した。
だが、長期間入院し症状は回復してもなお、PCR検査では陽性が続く「常陽」と呼ばれる状態の患者が退院リストに含まれている。こうした患者は退院後も指定場所で隔離されることになるとみられる。死滅したウイルスが残っているなどの可能性が指摘され感染力は低いとみられるが、ソーシャルメディア上では不安が広がっている。
中国政府は新型コロナウイルスの封じ込めに「成功」したと主張している。4月8日には湖北省武漢市の都市封鎖が76日ぶりに解除されており、北京や上海などのショッピングモールは大勢の人でにぎわうようになった。
1月末以降、全国に移動制限をかけ、企業活動も必要最低限なものを除き停止。外国人の入国に際しては14日間隔離やPCR検査を義務付け、その後は全面的な禁止に踏み切るなど水際対策も厳重だ。経済格差が大きく医療設備が充実していない地域も多い中国においては、ほかに選択肢がなかったと言えるが、その代償も大きかった。2020年1~3月の中国国内総生産(GDP)は物価変動を除いた実質で前年同期比6.8%減と大幅に落ち込んだ。
「復工復産」。大規模な移動規制によってウイルスの封じ込めに手応えを感じ始めた中国政府がこのスローガンを掲げて、できる限り早期に経済活動を再開するよう呼びかけ始めたのは2月末ごろのことだ。だが、それから2カ月がたとうとする今になっても、中国経済はまだアクセルを踏み切れていないのが実情だ。
「上海に戻るのは当分先になる。こちらで職を探すことも考えないと」。1月中旬に春節を利用して黒竜江省にある実家に帰省し、そのまま滞在を続けている女性は、こうため息をついた。
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