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 「新型コロナウイルスは基本的に抑え込んだ」

 中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席がこう高らかに宣言したのは3週間前の3月10日のことだった。春の陽気が感じられるようになるにつれて街には人が増え始め、上海の有名観光地や映画館など営業停止になっていた商業施設の再開も相次いだ。海外は感染が拡大していく中で、中国は対照的に国内経済を再起動させようというフェーズに入っている。

 中国政府は強権的な手法とデジタル技術を駆使して、徹底的に国内の感染拡大を抑え込んできた。湖北省一帯を封鎖。その他の地域でも感染者と濃厚接触した人は、公共交通機関の利用履歴や電子マネー支払い履歴などをフル活用して追跡し、洗いざらい検査する。公共機関を利用したり飲食店に入ったりする時は、体温測定を義務付ける。

 中国に近いとされる世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、「中国のいまだかつてない大胆な策は各国の手本になる」などと評価し、中国国営の新華社は「中国が世界のために時間を稼いだ」との記事を掲載。遅れて流行が始まった海外に対して医療物資や人員の支援を通じて影響力を拡大しようとする動きも見せている。

 だが、ここにきて中国国内では異変が起きている。複数の中国メディアは、中国国家電影局が3月27日、全国の映画館の営業再開見合わせと、再開済みの映画館の即時営業停止を求めたと伝えた。上海市の東方明珠テレビ塔や上海中心大厦(上海タワー)、上海海洋水族館などの有名観光スポットは3月30日から再び臨時休業に入った。

 一体、何が起きているのか。

再び閉鎖された上海市の東方明珠テレビ塔(写真:ロイター/アフロ)

無症状感染者からの伝染例が確認される

 今、中国政府が警戒を強めているのが「無症状感染」だ(関連記事:武漢で毎日発見される無症状感染者。映画館の営業が再度禁止された前日の3月26日、李克強(リー・クォーチャン)首相は「無症状感染者の予防と治療を最重要視しなければならない」と述べている。

 ここのところ、中国で発見される新規感染例の多くは、海外からの渡航者が持ち込んだものになっている。こうした状況を受けて湖北省は武漢市以外3月25日に封鎖を解除され、4月8日には武漢市も封鎖解除が予定されている。その矢先に、無症状感染者から伝染した可能性が高い症例が、国内で複数確認されたのだ。

 中国メディアの第一経済日報によれば3月下旬、湖北省咸寧市から居住地の他省に帰った人から感染が確認されるケースが2例あったという。咸寧市では2月下旬から新規感染者が報告されておらず、3月17日には市当局が市内の感染や疑い例は全てクリアされたと発表しており、「無症状感染者から伝染した可能性が高い」(第一経済日報)。3月28日には、河南省でも無症状感染者から伝染したとみられる事例も確認されており、このケースでは湖北省との接点はなかったという。

 WHOは無症状感染者も感染者として統計に含める方針で世界各国はこれに従っているが、中国は「無症状感染者については隔離をしており伝染させる恐れはない」としてデータには入れてこなかった。そのため、国外からは中国に無症状感染者がどれだけいるのか分からず、国際的なデータ解析にも支障をきたすと指摘されていた。