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 日本政府は2月25日、新型コロナウイルス対策本部を開き、感染の拡大に備えた対策の基本方針を決定した。一部地域で感染経路がわからない市中感染が相次いで発生している事態を受け、国民や企業にテレワークや時差出勤の推進を強力に呼びかけるなどの内容だ。このまま感染拡大が続けば、ほとんどの企業がテレワークの導入を迫られることになるだろう。

 新型コロナウイルスの脅威に最初に直面した中国では、働き方が大きく変わりつつある。政府の指導などで、多くの労働者が自宅からのテレワークを強いられているためだ。中国経済全体が深刻な落ち込みにあえぐ中で、局所的な特需が発生したテレワーク関連サービス市場に向けて、アリババ集団や騰訊控股(テンセント)、百度(バイドゥ)、北京字節跳動科技(バイトダンス)などが攻勢をかけている。

 アリババは「釘釘」と呼ぶサービスを1000万社に無償提供すると発表した。チャットやビデオ会議システムが利用可能で、2月以降中国における米アップルのiPhone向けアプリストアで首位に立ち続けている。春節明けの2月3日には1000万社が利用し会員数は2億人を超えるなどアクセスが急増。接続が不安定になった時間帯もあったようだ。2月8日には社員の健康情報管理機能を追加するなど、矢継ぎ早に機能を強化している。

中国のAppStoreでは企業向けのリモートワークツールが上位を占める

 テンセントはチャットを主体としたSNS「微信(ウィーチャット)」の企業版である「企業微信」を無料開放し会議機能を強化したほか、オンラインの問診機能を追加した。動画アプリの「TikTok(ティックトック)」で知られるバイトダンスは、企業向けサービス「飛書」を中小企業に3年間無料提供すると発表している。

 中国の個人向けネットサービスは競争が激しい。そのためアリババやテンセントなどIT各社は、一度導入されれば継続利用してもらいやすい企業向けサービスを拡大する意向を示していた。IT各社にとってはまさに勝負時であり、あの手この手で自社ツールの導入を働きかけている状況だ。

 オンライン化が進み始めたのは学校も同じだ。本来は春節が終わった2月中旬には2学期が始まるはずだったが、多くの地方で軒並み再開が3月以降に延期された。感染拡大が収まらなければ再開がさらに延期される可能性がある中で、中国政府は「授業は止めても学習は止めない」というスローガンを掲げて、オンライン授業を開始した。釘釘や企業微信などを利用している学校もあるという。

 中国はSNSや電子マネーが社会に浸透しておりデジタル化が進んでいる印象があるが、デジタルツールを活用して働き方の柔軟性を高める意識はどちらかというと乏しかった。ところが、突如としてほぼ全ての中小企業から大企業までが一斉にテレワークを導入せざるを得なくなった。新型コロナウイルスの流行は、今後の中国における働き方にも大きな影響を与えることになりそうだ。