NECは小野薬品工業と提携し、高速カメラとAI(人工知能)を活用してガラス瓶に入れた液体中の異物を高精度に検知する新技術を開発した。がん免疫薬「オプジーボ」や新型コロナウイルスのワクチンなど、液体の薬品が増えている。人による目視検査を減らすことで増産要請に迅速に対応できるようにするのが狙いだ。2022年度の商用化を目指す。

AIを活用し、ちりの動きで泡か混入物かを判断する
AIを活用し、ちりの動きで泡か混入物かを判断する

 薬液を入れたガラス瓶をロボットが上下にひっくり返すと、複数の気泡が上がっていく。その中には小さな「ちり」が混じっているが、50マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルほどの気泡と識別するのは至難の業だ。従来の画像検査システムは異物と気泡を見分けづらいことがあり、「人間の検査担当者による目視に頼っていたのが実情だった」(小野薬品)。

NECと小野薬品が開発した薬液の検査装置
NECと小野薬品が開発した薬液の検査装置

 そこで両社が開発したのが、AIを用いて動画を解析する装置だ。高速カメラを用い、ロボットがガラス瓶を揺り動かす様子を1秒当たり100枚以上も撮影。気泡や異物の動きをスローモーションのようにして追跡する。

 気泡は上に、異物は下に移動する傾向があるが、小さくなるほど違いは出にくくなる。NECは比重や形状の特徴が表れやすい異物特有の動きを「高速カメラ技術を生かして把握し、AIで解析できるようにした」(NECの宮野博義バイオメトリクス研究所所長代理)。AIの学習を進めたことで、50マイクロメートル程度の微細な異物を数秒間で判別できるようになった。従来は数百マイクロメートルが限界だったという。

 AIを活用する最大の利点は、検査担当者の労力を削減できること。「医薬品の検査は集中力の必要な作業だ。新型コロナのワクチンなども、増産時に迅速に対応することが課題だ」(小野薬品)という。担当者ごとのばらつきも減らせ、生産量が増えても検査品質を保ちやすくなるという。

 抗がん剤の普及などで、「液剤」の医薬品生産額は増えている。厚生労働省の薬事工業生産動態統計年報によると、「内用液剤」の19年の生産額は約2000億円で前年比1.3倍に増え、「注射液剤」は1.2兆円と同1.9倍だった。

 コロナ関連での需要も高まりそうだ。日本国内で2回目のワクチンを接種した人は12月21日時点で9836万人(全人口の77.7%)だったが、岸田文雄首相は17日には高齢者施設の入所者などを中心にワクチンの3回目の「ブースター(追加免疫)接種」を前倒しする方針を発表している。

 21年8月には米モデルナ製の新型コロナワクチンの一部から異物が見つかった。医療体制が逼迫する中、省庁や医療機関の限られた人材の業務負担を増やさずに検査の精度を高めることが課題になっている。

 NECの22年3月期の研究開発費は前期比18%増の1350億円で、売上高に占める比率では4.5%と同0.7ポイント高まる見込み。足元では19年にAI創薬の事業を立ち上げたほか、12月17日に発表した総額1.5億ドル(約170億円)規模のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)でもヘルスケア・ライフサイエンス領域に投資していく予定だ。小野薬品との提携も含め、医療分野の開拓を加速する。

この記事はシリーズ「日の丸電機サバイバル」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。