温泉地の観光と地熱発電は共存できるのか――。この難題に自ら取り組もうと、東芝は中部電力とタッグを組んだ。開発に10年かけてきた地熱発電所の事業運営は、今月やっとスタートした。活火山の多い日本は世界有数の地熱資源大国だが、2%しか発電に生かせていない。地元とうまく共存して、利用増加につなげられるだろうか。
「発電所の運営まで手がけることで、地域を重視する企業なのだと知ってもらいたい」。東芝エネルギーシステムズ(川崎市)の四柳端社長は、冬の飛騨山脈を眺めてこう語った。日本百名山の一つとして知られる焼岳のふもと、標高約1200mの地点に中尾地熱発電所(岐阜県高山市)ができた。東芝グループとして機器の納入だけでなく、地熱発電所のオペレーションまで担当するのは初めてだ。12月1日から営業運転を始めた。

のちほど詳しく見ていくが、地熱発電は再生可能エネルギーの中でも開発が難しい。地球のマグマによって温められた熱水と蒸気を使うが、うまく熱源を掘り当てなくてはならない。日本の地熱資源量は米国、インドネシアに次いで世界3位の2347万キロワット(kW)相当と見込まれるが、実際の地熱発電所の合計出力はその2.2%にとどまっている。温泉地や国立・国定公園に多くの熱源がある事情も影響してきた。
しかし、ウクライナでの戦争により天然ガス需給が世界で逼迫するなか、ただでさえエネルギー自給率が1割しかない日本は苦しい。政府の第6次エネルギー基本計画でも電源構成に占める地熱の比率は1%(30年度の見通し)だが、貴重な自給資源ともいえる。
しかも地熱発電の設備は東芝、富士電機、三菱重工業(旧三菱パワー)の3社が世界シェア7割を占めている。太陽光パネルや風力発電設備を海外メーカーに頼っている一方、この分野は日本企業の強みを発揮できる。特に東芝は1966年、日本初の地熱発電として完成した松川地熱発電所(岩手県八幡平市)の発電設備を納入。半世紀を超えるノウハウがある。
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