半導体のファウンドリー(受託製造)世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が海外展開を加速させている。背景にあるのは戦略物資の半導体を巻き込んだ米中の覇権争いだ。日本では熊本県に工場を建設するのに加え、設計開発や次世代技術の研究開発をする拠点も広げる。微細化技術が限界を迎える中、TSMCが頼りとするのが素材の開発やパッケージ加工に優れた日本企業の底力だ。

TSMCは台湾に「ギガファブ」と呼ぶ巨大工場を集中させて、絶え間ない技術革新と効率生産によって世界の半導体受託製造の過半を握る存在に上り詰めた。だが、米国と中国の技術覇権争いをきっかけに、先端技術の囲い込みが世界で激しくなっている。台湾海峡を巡る緊張の高まりも、経営の安定を脅かすリスクになっている。
世界各国は戦略物資の半導体製造拠点を自国に取り込もうと、ファウンドリーの誘致合戦を激化させている。そうした時流もにらみ、TSMCはグローバルに拠点を分散させる戦略へ方向転換。米国アリゾナ州に半導体受託製造の工場を建設する予定で、同じように日本では熊本県にソニーグループ、デンソーと受託製造工場を建設し2024年内の稼働を目指す。総投資額1兆2000億円のうち5000億円弱を日本政府が補助して、半導体の安定調達を後押しする。
日本は人材の宝庫
TSMCは20年に横浜市に設計開発センターを設立。21年には茨城県つくば市に次世代技術の研究開発センター、熊本県に製造子会社を設けた。22年末までに新たに大阪にも設計開発の拠点を設ける。
「日本は素晴らしい人材の宝庫で、重要な市場があり、技術が蓄積している。拠点を置かない理由はない」。シニア・バイス・プレジデントのケビン・ジャン氏は9月初旬、都内で開いた技術説明会で日本重視を強調した。

AI(人工知能)やスーパーコンピューター向けに高い演算処理能力と電力効率が求められ、TSMCは回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの半導体を25年までに量産する計画を打ち出している。
ただ、2ナノより先の微細化は難しい。半導体の集積率が2年で2倍になるムーアの法則に終わりが近づきつつある。
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