ITソリューションで成長するため、約1兆円で米社を買収した。鈍牛といわれた日立。スピード感のある事業変革に欠かせぬピースという。構造改革を終え、新たな日立の姿をどう描いているのか聞いた。(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)
■連載予定 ※内容は変更する場合があります
(1)日立の大変革を先導 米グローバルロジックの実力
(2)「日立時間」から脱却 買収企業に学ぶアジャイル文化
(3)デジタル人材10万人計画 日立、独自資格や研修充実
(4)沈む巨艦に大なた 日立歴代3トップが構造改革できた理由
(5)日立・東原会長が描いた改革「サイロを壊し、黒船を呼び込んだ」
(6)日立は世界で勝てるか DX、敵はシュナイダーやアクセンチュア
(7)日立の小島社長「GAFAのような俊敏さがなければ負ける」(今回)
(8)日立がグローバルリーダーになるには「多様性が不可欠」伊出身常務

2009年3月期に7873億円という巨額の最終赤字を計上し、川村隆さん、中西宏明さん、東原敏昭さんが構造改革をして、バトンが小島さんに託されました。ご自身の役割をどう感じていますか。
小島啓二・日立製作所社長兼CEO(以下、小島氏):資金的な危機から脱出してV字回復した後、二度とこれほど大きな赤字を出さない企業になると固く決意して、この10年間ひたすら手を打って事業の構造を変えてきました。我々の目指す方向性とは違ったところで成長すべきだと思った事業は外へ出し、必要だと思う事業は取り込み買収する。このようにして事業ポートフォリオの入れ替えをし続けた10年間と言っていいでしょう。
そして構造改革にはめどがつきました。定常的にポートフォリオの改革は続けなければならないが、一番ベースの部分はもうそんなに変えるつもりはありません。むしろ、このそろったアセットをしっかり回してキャッシュをつくり、投資と還元に充てて大きくしていく。企業としてオーガニックな成長へとかじを切る。これが自分の役割だと思います。
難しい役回りですね。
小島氏:従業員全員の考えが成長を強く意識するように変わっていかないといけない。事業の出し入れではなく、自らのアセットをどうキャッシュに変えていくのか、ここを重視する必要があります。各事業で重要視する指標も、事業の取捨選択の基準としてきた営業利益率からキャッシュベースに変わっていきます。
基礎工事は川村、中西、東原と相当な勢いでやってきた。東原はブルドーザーとしかいいようがないくらいにものすごい勢いで整地作業をしてきた。後の自分がいかに生かすかに成長できるかがかかっています。
典型的なコングロマリット
それにしても上場22社をゼロにするというのは大変な改革ですね。かなりの抵抗があったのではないでしょうか。
小島氏:優秀な上場子会社が業績を支えて、本体は一番ローパフォーマーという時代はありました。典型的なコングロマリットですね。上場子会社は、俺たちが支えているという思いもあったのではないでしょうか。
プライドも高かった。
小島氏:そうですね。考えもそろいにくかった。日立を1つの会社にしていく中で、お互いに議論し、グループ外に出たほうが成長できるという事業がたくさん出てきました。その整理を10年でよくできたと思います。
パフォーマンスがいい会社だけを集めるやり方ではなかった。パーパス経営のように、中西さんが社会イノベーションと定義付けし、東原さんが進めた。それが何とかここまで来られた要因です。
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