「私の最大の使命は、すべてのステークホルダー(利害関係者)との信頼関係改善に全力で取り組むことだ」。東芝が5月14日に開催した、今後の経営方針や2021年3月期決算の説明会。オンラインで登壇した綱川智社長兼CEO(最高経営責任者)はこう宣言した。

今後の経営方針を説明する東芝の綱川智社長兼CEO(最高経営責任者)

 背景にあるのがトップ人事をめぐる混乱だ。前任社長の車谷暢昭氏はアクティビスト(物言う株主)が納得する成長戦略を示せず、対立が泥沼化していた。4月には英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズが2兆円超での買収を提案したが、車谷氏の古巣であることから「出来レース」と受け止められた。最終的に車谷氏は辞任を余儀なくされ、会長だった綱川氏が社長として復帰した。

 実際、5月14日に綱川氏が発表した経営方針にはアクティビストへの「気遣い」が色濃くにじんでいる。

 象徴が「戦略委員会」の新設だ。社外取締役のみで構成され、株主などの意見を聞いたうえで事業戦略や財務戦略に関わる執行部門からの提案を検証する。検討結果は取締役会に推奨され、決議事項を株主に説明する役割も担うという。株主との対話の「質と量を増やしていく」と綱川氏は意気込む。

 増配も発表した。21年3月期の決算を受けて年間配当を従来予想の1株当たり50円から80円に増やす。さらに、追加で1500億円規模の株主還元も実施するという。「財務規律の範囲内として還元方針を決めた」と、東芝の加茂正治執行役上席常務は説明する。

 5月14日には、6月末に開催予定の定時株主総会で決議する取締役候補者も明らかにした。東芝執行役専務の畠澤守氏や弁護士の綿引万里子氏ら4人を新たに選任し、藤森義明氏ら2人が退任する。藤森氏は買収提案のあったCVC日本法人の最高顧問を務めている。綱川氏は「2年間しっかりと任務を果たしてくれたので交代となる」と説明するが、CVCの買収提案に関する利益相反を回避する狙いがあったとみるのが自然だろう。

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