ダイキン工業はエアコンの世界大手であると同時に、冷媒のメーカーでもある。今、注力するのは電気自動車(EV)用の開発だ。家庭用エアコンや業務用冷凍機などの冷媒から、初めて自動車用に参入する計画を持つ。開発はどこまで進んでいるのだろうか。

 エンジンを持たないEVは、ガソリン車のようにエンジンからの排熱を車内の暖房に生かすことができない。代わりに電気ヒーターで温めており、その分、電力を消費している。

 そこで、エネルギーを節約し航続距離を伸ばすため、外気から吸い上げた熱を車内に送るヒートポンプ式暖房を取り入れる車が増えている。

 ダイキンが開発するのは、このヒートポンプ式空調用の冷媒だ。冷媒は外気中の熱を受け取り、車内へ運んで放出する物質で、圧力によって気体や液体に変化しながら、空調の中を循環する。

 ダイキンは2024年、茨城県神栖市の鹿島製作所に試験用のプラントを設ける。同社はこれまで自動車用の冷媒市場には未参入だった。27年に量産車種への提供を目指している。

EVのエアコンの効率化は、航続距離を伸ばす上で一層注目されている(写真=AP/アフロ)
EVのエアコンの効率化は、航続距離を伸ばす上で一層注目されている(写真=AP/アフロ)

 開発の最大の焦点は、新たな冷媒によってEVの航続距離をどれくらい伸ばせるかだが、同社はその見通しに言及することに慎重だ。「カーエアコンや完成車のメーカーに提案しながら共同で性能を探っている最中。コストなどを加味してメーカーが本当に採用するかどうかも含め、確実なものはまだ何もない」(同社)という。だが、そのような状況でも「(試験用プラントに)投資していく必要がある」(ダイキン幹部)というスタンスだ。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り974文字 / 全文1623文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「日の丸電機サバイバル」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。