現地時間で3月24日、半導体の技術革新への指針をつくった米インテル共同創業者のゴードン・ムーア氏が死去した。ムーア氏は、「半導体の集積回路上に搭載される素子数は約2年ごとに倍増する」という「ムーアの法則」を提唱した。この法則に基づいて世界の半導体業界では激しい研究開発と投資競争が繰り広げられ、脱落した日本の半導体メーカーが衰退の道をたどる一因となった。

ゴードン・ムーア氏は技術革新の指針をつくった(写真:AP/アフロ)
ゴードン・ムーア氏は技術革新の指針をつくった(写真:AP/アフロ)

 スマートフォン(スマホ)には頭脳役のMPU(超小型演算処理装置)が入っていて、その集積回路の中には多数の「トランジスタ」と呼ばれる素子が搭載されている。素子数が多くなると、半導体の計算処理などの基本性能が上がる。そのためには半導体の回路線幅を細くする「微細化技術」の向上がカギとなる。半導体の加工寸法を短くしたり、配線幅や間隔などを細くしたりすると、1個の半導体チップにより多くの電子回路を描け、より多くの素子を搭載して、性能を引き上げられるようになる。

 ムーア氏は集積回路の素子数が増加するペースを1965年に「1年ごとに倍増する」と予想し、75年には「2年ごとに倍増する」と変更した。かつて集積回路が登場した50年以上前には、回路の最小線幅が10マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルほどだったとされる。現在のスマホのMPUに使われている回路線幅は、4ナノ(ナノは10億分の1)メートルや5ナノメートルなど1ケタナノ台の技術が使われている。数字を丸めて約10ナノメートルとしても、単純計算で1000分の1にまで回路線幅が極小化したことになる。

素子数は100万倍以上、予言は的中

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