ほぼ2年かけて企業再編のドタバタ劇を繰り返してきた東芝。いったん投資ファンドが買収して経営環境を整えるという案は、あわや瓦解しかけたところで同社の取締役会による受け入れが決まった。金融機関が「最終列車」と見ていたプランを蹴れば、株価は急落しかねない状況だった。同社幹部の間では今回の案に異論も出ていたが、全てを台無しにはできないと、最後に合理的な方向性を見出した。

東芝はJIPの買収案を受け入れ、経営危機からの再建プロセスは大きな節目を迎えた(写真:共同通信)
東芝はJIPの買収案を受け入れ、経営危機からの再建プロセスは大きな節目を迎えた(写真:共同通信)

 「ロード・オブ・ザ・リング」――。東芝社内で、経営権を巡る混迷はこう呼ばれている。英国の作家トールキン氏によるファンタジー小説は、不思議な指輪の持ち主が次々と支配欲に飲み込まれていく。東芝の取締役会も、様々な思惑が絡み、買収案を受け入れるまで曲折を経てきた。

 投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)が2月上旬に出した東芝買収の最終案は、エクイティー(出資)と融資を合わせて約2兆円でTOB(株式公開買い付け)を実施するものだ。東芝の社外取締役で構成する特別委員会は議論を重ね、どうにか3月23日の取締役会で受け入れを決めた。あと6営業日たって事業年度が変わってしまえば、買収資金に対する銀行の融資姿勢も再び変化しかねない瀬戸際のタイミングだった。

 ここまで議論が紛糾した背景には、他の日本企業にとっても見過ごせない構造要因がある。東芝は取締役12人のうち10人が社外取締役で、外形的にはコーポレートガバナンス(企業統治)の先進企業だ。東証プライム市場が求める「3分の1以上」どころか、83%を占める。ところが社外取締役の思惑がバラバラだと、同床異夢のまま物事は決まらない。

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