自ら招いたアクティビスト

 「アクティビスト(物言う株主)を受け入れた時点で、こういう状況に陥るのは目に見えていたはずだ」。企業のガバナンス問題に詳しい久保利英明弁護士は、日経ビジネスの21年11月22日号の特集「東芝解体」でこう語った。

 アクティビストの使命は、背後にいる資産家から預かっている資金を元手に大きなリターンを生むことだ。このため投資先の企業に対して、株主還元という「お返し」の拡大を迫る。企業が通常の状況であれば、長期志向の「安定株主」と関係を築こうとする。しかし、15年に発覚した不正会計以降、東芝は普通の状態ではなくなっていた。

 「考えられるなかで最悪の一手だった」。東芝元幹部がこう酷評する決断がある。17年11月に東芝が決めた、6000億円の第三者割当増資だ。米ゴールドマン・サックス(GS)が単独主幹事を務め、約60の投資ファンドからの出資を取り付けた大型ディール。東芝元幹部が「悪手」と評したのは、シンガポールのエフィッシモ・キャピタル・マネージメントや米エリオット・マネジメントなど多数のアクティビストが含まれ、経営が困難になると想定されたからだ。

 18年3月期に2期連続の債務超過になると、東京証券取引所の上場廃止基準に抵触する。上場を維持するには、どこかから資金を調達する必要があったが、当時の経営陣は「高利貸し的な存在」(関係者)に頼ってしまった。

社長交代、4カ月前からプレッシャー

 アクティビストに揺さぶられる東芝は窮余の策として、22年3月1日に経営陣を刷新した。これについて一部の海外メディアは「突然の社長辞任」と報じたが、実際には21年11月から人事交代を巡って株主と同社のやり取りは激化していた。

 「東芝の株価が伸び悩んでいる最大の原因は、経営陣への不信だ。会社を分割しても人が代わらないなら問題は解消されない。経営陣は保身を優先した」。東芝株を保有するアクティビストは21年11月12日の夜、日経ビジネスの取材に対して失望をあらわにした。

 東芝は同日、主要事業ごとに3つの会社に分割する「スピンオフ(分離)案」を発表した。インフラ事業とデバイス事業、そして資産管理などを手掛ける3社に分割し、それぞれ24年3月期をめどに上場させる方針となっていた。

 この3分割案には、複数の大株主から批判の声が相次いだ。そして東芝は22年2月、3分割案を2分割案へ修正することにした。しかし、株価は上がらず会社側と株主の双方に焦燥感が募った。もともとショートリリーフを自認していた当時の綱川智社長兼CEO(最高経営責任者)を含め、経営陣交代に向けた調整が加速していった。

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