(写真:共同通信)

 初の「純利益1兆円」──。ソニーが10年以上をかけて継続してきた戦略が花開こうとしている。

 ソニーは2月3日、2021年3月期の連結純利益が前期比86%増の1兆850億円になる見通しだと発表した。8000億円だった従来予想から2850億円上乗せした格好。ソニーとしては過去最高だった19年3月期の9162億円を上回り、初の1兆円超えとなる。

 決算後の株価を見る限り、投資家は大台達成の実力を「本物」と判断しているようだ。決算翌日から2日間で株価は17%上昇。時価総額も過去最高を更新して15兆円を超えた。00年のIT(情報技術)バブル期のソニーを、21年かけてようやく追い越した。8日の終値は先週末比355円安となったが、決算発表前から比べれば14%高い水準だ。

「個々の事業は強くなっている」

 「ロングレンジで経営力は強化されており、個々の事業は強くなっている」。2月3日に開催したオンラインでの決算説明会に登壇した十時裕樹副社長兼CFO(最高財務責任者)は、淡々とした口調ながらも強い自信をうかがわせた。

 今回発表した通期見通しでは、20年10月の前回予想に対して主要6部門すべての営業利益を上方修正した。新型ゲーム機を投入したゲーム部門や、「鬼滅の刃」劇場版のヒットでアニメ事業の売り上げが増えた音楽部門など今期ならではの要因もあるとはいえ、総合力の向上が好業績につながった。

ソニーの部門別営業利益。各部門で安定的に稼ぐようになった

 もっとも、大台突破は一朝一夕に実現したものではない。リーマン・ショック後に業績が悪化したソニーは、09年3月期から15年3月期までの7年間で純利益が黒字になったのは13年3月期の1期だけだった。その苦しかった時期に仕込んだ種が、徐々に花を咲かせている。

 ソニーが進めてきた戦略はオーソドックスだ。端的に言えば「事業変動リスクを抑えながらも、勝てる領域を選別して攻める」というもの。この10年余りを振り返ると、すべての事業でこうした戦略を推し進めてきたことが見て取れる。

 成長の種を最も古くから仕込んできたのがゲーム事業だろう。10年以上の年月をかけて構築したネットワークサービスが現在のゲーム事業の強さの源泉になっている。

 ソニーがプレイステーション向けのネットワークサービスを打ち出したのは06年に遡る。10年には定額でオンライン対戦などを楽しめる「プレイステーションプラス」を開始した。「サブスクリプション(定額課金)」という言葉が注目されるはるか前、先々代のゲーム機「プレイステーション3」の時代から仕込みを始めていたことになる。

個人情報流出事件でつまずいたが……

 ただ、11年に個人情報の流出事件が起きるなど、決して順風満帆ではなかった。「ソニーグループの最重要戦略であり、変更はない」。情報流出時の記者会見で当時副社長だった平井一夫氏(現シニアアドバイザー)はこう言い切り、ネット戦略の手を緩めなかった。

 13年に発売した後継ゲーム機「プレイステーション4」では、「ネットワーク接続を前提に設計を進めた」(当時の開発担当者)。SNSとの連携機能などを盛り込み、ネットワークサービスへの導線を増やしていった。20年12月末時点でプレイステーションプラスの会員数は4740万人を突破するまでに成長した。

 今期のゲーム事業は新型ゲーム機「プレイステーション5」の立ち上げ費用がかさむほか、ハード単体ではコストが販売価格を上回る「逆ザヤ」の状態にある。それでもゲーム事業の営業利益見通しは前期比4割増の3400億円だ。新型ゲーム機の投入直後に赤字になる姿は過去のものとなり、投資と利益成長が両立する事業に成長した。

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